
首相石破茂を“袋だたき状態”にしたあの「石破降ろし」は何だったのか――。前倒しの自民党総裁選の結果、反石破の急先鋒だった高市早苗が新総裁に選出されたものの、いまだに船出もできずに立ち往生したままだ。加えて26年間の連立のパートナーだった公明党の離脱を招来した。このため臨時国会を召集しても高市が首相に指名される保証はなく、石破が首相を続ける「総・総分離」という異常事態に陥った。総裁選後の展望がないまま反石破感情に任せて突き進んだツケが一気に噴き出した。
そのつまずきは総裁選直後に断行した党の役員人事から始まった。副総裁・麻生太郎、幹事長・鈴木俊一、総務会長・有村治子、政調会長・小林鷹之、選対委員長・古屋圭司、幹事長代行・萩生田光一、組織運動本部長・新藤義孝、広報本部長・鈴木貴子――。
麻生と鈴木は言わずと知れた義兄弟。麻生が鈴木を「将来の麻生派会長」と定めているのは党内の常識。総裁選でも麻生が高市を支持する条件の一つに鈴木を幹事長に起用することがあった。自民党長老は「高市選対幹部の閣僚経験者がその仲介に動いた」と証言した。
他にも総務会長に就任した有村は石破政権の両院議員総会長として、石破降ろしのための総裁選前倒しの道筋をつけた“功労者”。萩生田は裏金問題で浮上した「旧安倍派5人衆」の一人。今も旧安倍派内での影響力は大きい。無派閥の高市にとって萩生田以上に頼れる存在はなかった。高市も総裁選中に早々と旧安倍派の裏金議員の要職起用を公言した。
「(裏金問題に関係した議員は)党の処分や選挙で審判を受けている。適材適所で力を発揮してほしい」
いわば個別のポストではなく、裏金議員全員に向けて復権を約束したわけだ。高市が総裁選の党員投票で圧倒的な支持を得たのは、安倍政権を支えた岩盤支持層を掘り起こしたことが大きく、落選議員を含む旧安倍派の議員がその原動力になったとみられている。