現在公開中の劇場版最新作、「鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来」(7月18日公開)。上映14週目となる10月23日現在も、国内映画興行ランキングで邦画3位につけている(公式サイトトップより)
興行収入367億円を突破し、海外でもヒットを続ける『鬼滅の刃』最新作。しかし、あなたはこの映画の監督が誰か知っているだろうか?歴代興収1位・2位を独占する大ヒット作なのに、監督名を答えられる人はほとんどいない。「コナン」も「ミッション:インポッシブル」も、さらには「アナと雪の女王」も同じだ。なぜ現代の観客は監督を気にしないのか。その背景にある「批評の死」、さらにはYahoo!ニュースや生成AIまでつながる、この時代特有の現象とは……。(ライター、編集者 稲田豊史)
「鬼滅の監督なんて誰も知らないでしょ?」
今回はちょっとしたクイズから始めたい。あなたは、劇場版『鬼滅の刃』の監督が誰か、知っているだろうか?
10月20日、『鬼滅の刃』の劇場版第2作『無限城編 第一章』の興行収入が367億円を突破し、第1作『無限列車編』の407億円に迫りつつある。2本の国内興収は現時点で歴代1位と2位。過去に日本で公開された“すべての映画”の中で「ワンツー」ということだ。2本とも、日本国民の5人に1人以上が観ている計算である。ものすごいことだ。
しかし、この2本の監督を言える日本国民は少ない。ある興行関係者は「鬼滅の監督なんて誰も知らないでしょ?」と笑い混じりに語っていたが、比喩的に言ってその通りだと思う。少数のアニメファンや映画ファン、エンタメ業界従事者を除き、観客の大半は『鬼滅の刃』の監督を知らない。もっと正確に言えば、「特に気にしていない」。
同じことは、毎年100億円以上の興収を叩きだす「劇場版 名探偵コナン」シリーズや、洋画としては数少ない安定ヒットが見込める「ミッション:インポッシブル」シリーズ、少し遡れば「ハリー・ポッター」シリーズにも言える。
うるさ型の映画ファンの中には、監督が誰かを気にしないことを「嘆かわしい」と形容する人もいる。「総合芸術たる映画を鑑賞するにあたって監督に注目しないなら、一体何を観ているんだ?」といった調子だ。なんなら説教口調。完全に怒っている。もしくは馬鹿にしている。







