「お金のこと、周りの人より苦手かも……」。そう思ったこと、ありませんか?
この連載では、年間100世帯以上の相談にのっている発達障害専門のFPで自身もADHD当事者である『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』の著者・岩切健一郎氏が、お金について解説します。読者からは、
「ここまで寄り添ってくれるお金の本は初めてだった!」
「お金に苦手感のある人は全員読んだ方がいい」

といった喜びの声が届いています。発達障害の人も、そうじゃない人にも役立つヒントが満載です。
※現在、正式な診断名は「発達障害」から「神経発達症」へ変更になっていますが、この連載では広く知られている「発達障害」という表現を用います。

遅刻する発達障害の部下に「仕事ナメてんの?」と、心の中で詰めてしまう人に伝えたいことPhoto: Adobe Stock

時間の管理が苦手なのは、脳の仕組みのせいかも

 前回の記事でもお伝えしましたが、発達障害とは生まれつきの脳の特性で、脳神経の仕組みや遺伝、環境など様々な要因が影響した結果、生活で困難を抱えている状態です。

 特にADHDは、神経伝達物質(セロトニンやドーパミンなど)の働きに違いがあると言われています。これは本人の努力でコントロールできるものではありません。「気をつけよう」と思っても、それがうまくいかないのは脳の働きによるものなのです。

 ですから、いつも遅刻する人が周りにいたら、もしかしたらそれは脳の仕組みが関係しているかもしれません。遅れずに行こう! と強く思っていても、脳の仕組み的に難しかったら、意思や努力で克服することは非常に難しいのです。

ADHD TAXって知っていますか?

 前回の記事でもお伝えしたADHD TAX。これはADHD特性由来の出費を指す海外でのスラングで、直訳するとADHD税。つまりADHDの特性が原因でかかってしまうコストのことです。

 様々なADHD TAXを経験してきた当事者として、そしてお金の相談を受けてきたFPとして、ADHD TAXを「7つの税金」に分類しています。今回は「時間税」についてご紹介しましょう。

時間税 「いつも遅れて、タクシーヘビロテ」

 準備が遅れて、乗車時間に間に合わずにADHD TAXを払った人は少なくないはずです。

 私の失敗で最も記憶に残っているのは、夜行バスを逃したために、飛行機に乗り遅れかけたことです。
 その日は夜行バスで新潟から羽田に行き、朝一の飛行機で羽田から福岡へ飛ぶ予定でした。
 しかし、準備に時間がかかりバスの時間に間に合わない事態に。しかし夜行バスに乗らないと朝一の飛行機には間に合いません。飛行機には絶対に乗らなければいけなかったので、夜中に新潟から羽田へ車を走らせて、なんとか飛行機の出発時間に間に合わせました。

 本来必要なかった高速道路代ガソリン代羽田空港の駐車場代と、移動のための体力時間がADHD TAXです。かなり盛りだくさんですね。。。

 準備に時間がかかって遅刻ギリギリの出発になり、タクシーを頻繁に利用するのも、時間税のひとつと言えます。

集中するまで時間がかかる!

 また、時間管理の問題は、自己投資や自己啓発にも影響を与えます。これは地味に効いてきている人は多いのではないかと思います。

 ADHDの特性がある人は、集中するまでのアイドリングタイムが長い傾向にあります。
 私は資格取得の勉強を開始するにあたってプラス1時間はアイドリングが必要なタイプです。毎回1時間多めに確保するので、その分の時間がADHD TAXです。

 このように余分な時間が必要だと、他の人よりも目標達成するのが遅れたり、多くの時間がかかったりします。

家庭生活にもひそむ時間税

 時間税は範囲が広く、家庭生活においても時間管理の問題は出費を引き起こします

 例えば家事や育児の時間管理がうまくいかず、外部のサービスを受けざるを得ない場合。掃除やベビーシッターの費用などが発生します。もちろん必要であれば受けるべきサービスです。ただ効率の悪さから外部への依頼が必要になるのであれば、ADHD TAXと言えますね。

 時間感覚の弱さによる出費は、あらゆるシーンに影響を及ぼします

「発達障害だから許してもらえる♪」なんて思ってない

 当事者として言えるのは「遅刻しよう」なんてことは、1ミリも思っていないということ。
 そして、ちゃんと時間どおりに到着しようと努力しているということです。
 遅刻してしまったときは、約束の相手に対して、本当に申し訳ない気持ちになっています。

 もちろん、脳の仕組みが関係しているからと言って、「仕方ないでしょ? 許してね!」と言いたいわけではありません。

 もし職場やご家庭、ご友人で、そういう方がいたら、どうしたら遅れずに済むのか? という視点で、一緒に考えてもらえたらうれしいです。

(本記事は、『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』から一部抜粋・編集したものです。)