「お金のこと、周りの人より苦手かも……」。そう思ったこと、ありませんか?
この連載では、年間100世帯以上の相談にのっている発達障害専門のFPで自身もADHD当事者である『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』の著者・岩切健一郎氏が、お金について解説します。読者からは、
「ここまで寄り添ってくれるお金の本は初めてだった!」
「お金に苦手感のある人は全員読んだ方がいい」
といった喜びの声が届いています。発達障害の人も、そうじゃない人にも役立つヒントが満載です。
※現在、正式な診断名は「発達障害」から「神経発達症」へ変更になっていますが、この連載では広く知られている「発達障害」という表現を用います。
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片付けが苦手なのは、脳の仕組みのせいかも
発達障害とは生まれつきの脳の特性で、脳神経の仕組みや遺伝、環境など様々な要因が影響した結果、生活で困難を抱えている状態です。
特にADHDは、神経伝達物質(セロトニンやドーパミンなど)の働きに違いがあると言われています。これは本人の努力でコントロールできるものではありません。「集中しよう」「気をつけよう」と思っても、それがうまくいかないのは脳の働きによるものなのです。
ですから、片付けが苦手な傾向の人がいるのも、脳の仕組みが関係しています。
きれいにしよう! と強く思っていても、特性的に難しかったら、意思や努力で克服することは非常に難しいのです。まずはその点を知ってもらえたら、接し方も変わるかもしれません。
ADHD TAXって知っていますか?
片付けに関連して、ADHD TAXについてお話ししましょう。
これはADHD特性由来の出費を指す海外でのスラングで、直訳するとADHD税。つまりADHDの特性が原因でかかってしまうコストのことです。
私もADHD TAXのために1年間で100万円近く吹き飛んだことがあります。
様々なADHD TAXを経験してきた当事者として、そしてお金の相談を受けてきたFPとして、ADHD TAXを「7つの税金」に分類しています。
今回はその1つ、「片付け迷子税」についてご紹介しましょう。
片付け迷子税「何度も買ってる同じ本」
「探すより買ったほうが早い」。
これは、私の人生で何度もくり返されてきた言葉です。そして買って帰ったらすぐに見つかることもしばしば。特に過去に多かったのは、同じ本を何冊も買ってしまうこと。面白そうと思って買ったら、すでに持っていたというケースは1度や2度ではありません。
相談者の中には、3回も同じ本を購入していた方もいました。「また買っちゃった」と落ち込む気持ち、よくわかります。
また、冷蔵庫の中で食材を腐らせてしまうのも、片付け迷子税です。
特売品を買いだめしておいて、どこにしまったかわからなくなり、気付けばカビが生えていた、ということも。
整理整頓の苦手から来る重複購入や忘却による損失も、地味ながらボディーブローのように効いてくるADHD TAXです。
当事者の生活をとおして、
「あ! これは片付け迷子税かも?」
「もしかしてADHD税?」
と感じるかもしれません。
片付けが苦手なことで生じるコストもあるのです。そこに気づいてもらえたらうれしいです
(本記事は、『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』から一部抜粋・編集したものです。)






