「お金のこと、周りの人より苦手かも……」。そう思ったこと、ありませんか?
この連載では、年間100世帯以上の相談にのっている発達障害専門のFPで自身もADHD当事者である『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』の著者・岩切健一郎氏が、お金について解説します。
発達障害の人も、そうじゃない人にも役立つヒントが満載です。
※現在、正式な診断名は「発達障害」から「神経発達症」へ変更になっていますが、この連載では広く知られている「発達障害」という表現を用います。

周りが主役にならないで
もし家族の誰かが発達障害で、お金のことが心配だったらどのように接するのが良いでしょうか。
お金関係が苦手な発達障害のある人に対する家族の立ち位置は、補助輪がベストです。
すべてを管理するのではなく、本人が転びそうになった時、あるいは転んでも大丈夫な範囲で事前に管理するイメージです。
例えば、
・貯蓄用口座を一緒に作る
・NISAを始めるために証券口座を一緒に作る
・毎月の支出を一緒に確認する
などのサポートは有効です。
当事者本人の金銭感覚が弱く、クレジットカードをうまく使えない時(使いすぎてしまうなど)は、家族カードの設定にして、家族みんなで支出を見える形にしておくなど、少し踏み込んで管理します。
その時に注意することは、本人と同意のうえで進めていくこと。本人に危機感がなければ、いくら周囲が働きかけても意味がありません。
消費者金融から200万の借金。
親が管理するも、闇金から借金…
過去にこんな相談がありました。
これ以上は子どもに任せておけないので親のほうで強制的に管理していたら、
今度はSNS経由で闇金からお金を借りているのがわかった。どうにかして欲しい」
と親御さんから連絡がありました。
結論から言うと、闇金にまで手を出していると私ができることはなく、弁護士に相談するように案内させてもらいました。
このように、本人の同意なく強制的に管理してしまうと、もっと悪化することがあります。サポートは話し合いのうえで進めていくようにしましょう。
推し活で300万の借金。
危機感のない息子に家族は…
次は改善が進んだ事例です。
推し活で300万円以上借金しているのがわかった。
どうにかしたい」
と親御さんから連絡がありました。
しかし、借金をした本人はそこまで危機感がないとのこと。本人のやる気がなければ、いくら周囲が働きかけても改善するのは非常に難しいので、まずは本人が改善したいと思うように家族の中で話し合いを続けていただくよう伝えました。
それから1年後のこと。ご両親の説得で「このままではまずいと思った」と本人が直接相談に来られました。
そして毎週私と面談して1週間の支出を振り返り、クレジットカードは家族が管理することになりました。返済も非常に順調に進んでいます。
何よりも大きな収穫が、本人の金銭感覚の成長です。それまではコンビニで自由に買い物をし、行きたいライブには全部参加し、まったく節制をしたことがなかったそうです。
今では「コンビニは高いので、本当に必要なモノ以外は買わなくなりました」と報告をくれるようになりました。「これまでお金をテキトーに使っていました」と振り返っていたのが印象に残っています。
苦手なことは悪いことなんかじゃない
当事者をサポートする際、周りの人が主役になってはいけません。
当事者本人が自分は何が苦手なのかを自覚し、それを改善したい、克服したいと思える環境を整えること。
それが周りの人がすべき最高のサポートです。
ただ、「苦手なこと=悪いこと」と捉えている当事者も少なからずいます。まずは「苦手なこと=誰かのサポートを受けてもいい」という考え方に変えるところから始める必要があるかもしれませんね。
(本記事は、『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』から一部抜粋・編集したものです。)