ご家族や医師から「年をとったのだから仕方がない」と、何度も言われると、「そういうものなのかな」と、あきらめてしまいがちですよね。

 でも私は、すべての患者さんが希望を持てるような声かけや指導をしていくべきだと考えており、つねにそう心がけています。

 確かに、すでに脊柱後弯がかなり進んでしまい、手術をしても劇的な回復は望めない患者さんもいます。

 しかしそんな患者さんでも、筋力トレーニング、ストレッチ、電気刺激など、現在の能力を維持する方法や、痛みを和らげる方法はあります。

 一生懸命に改善に取り組んでいれば、部分的ではあっても、回復する見込みはあるのです。自身の状況を知ってうまくつき合う、または立ち向かうという気持ちが重要だと考えています。

 それをやめてしまうと、状況がよくなることはありません。あきらめた瞬間、悪化のスピードは加速してしまうのです。

 ましてや症状が軽い人、進行していない人は、とても高い確率でよい効果が出ます。医師にかからず、取り組みをやめてしまうのは、もったいないことなのです。

歩行器を使ったとしても
歩き続けることが何より大事

 自分ではウォーキングをして筋力や体力をつけようと思っているのに、「転んだら危ないから、家でじっとしていて」と、家族から止められているという話もよく耳にします。

 もちろん、忠告するご家族の気持ちも理解できます。高齢者が転倒すると、そのまま寝たきり生活になるような、取り返しのつかない骨折を起こすことがあるからです。

 でも、歩くのをやめてしまうと、あっという間に筋力が落ちてしまいます。筋力が落ちると、さらに歩けなくなるという悪循環に陥り、その先にはやはり寝たきり生活が待っています。

 このジレンマを解消するためには、「安全に」歩くしかありません。

 歩きましょう。ただし、室内なら手すりを持ちながら「安全に」。屋外なら舗装された交通量の少ない「安全な」道を。

 たとえ、杖やカート(手押し車)、歩行器を使ったとしても、歩くのと歩かないのとでは、筋肉に与える効果に大きな差があります