格好悪いなんていわず、杖やカートでバランスをとりながら、転ばないようにして「安全に」歩いてください。

 ことわざにあるように、まさに「転ばぬ先の杖」なのです。

 もしも歩くときに痛みを感じるのであれば、痛みを和らげる方法がないかを医師に相談して、歩ける状態をつくってみてください。

 そして、ご家族の方は、歩こうとする本人の気持ちを削がないように注意してください。たしかに、歩く量が増えれば転ぶリスクも増えるのですが、歩かなければ筋力は衰えていきます。

 禁止するのではなく、安全に歩けているかを確認しながら見守る――それが、あなたの大切な人の希望と未来を守ることにつながるのです。

 もうひとつ、ご家族にお願いしたいのは、メンタル面のケアです。

 私たち医師も、患者さんのメンタルをケアするように心がけています。しかし、治療にあたるだけで精一杯なときもあるというのが本音です。

 とにかく、よく話を聞いてあげましょう。

 がんばったときはほめて、くじけそうになっているときは励ます。家族が本人にとっての心の杖になるのが理想的です。

50歳を過ぎたら
定期的に骨密度検査を

 超高齢化社会なので、当たり前といえば当たり前ですが、昔に比べると高齢の患者さんが増えています。

 それにともない、脆弱性の骨折での来院が目立っています。とくに脊椎の圧迫骨折、骨盤の骨折、脚の付け根の大腿骨の骨折が多いです。

 若いときなら折れないような衝撃でも、高齢者は骨が弱くなっているので折れてしまいます。先ほどもお伝えしましたが、くれぐれも歩くときは「安全」に注意してください。

「いつの間にか骨折」(編集部注/骨粗しょう症などにより骨が弱くなり、転倒などの大きな外傷がないにもかかわらず骨折してしまう状態)もよく見られます。

 X線撮影で「骨折していますよ(していましたよ)」と指摘するケースもしばしばです。

 これは年をとって痛みに鈍感になっているわけではありません。