「もっとこうすれば良かった」「本当にうまくいくだろうか」など、考えてもしかたないことをずっと考え続けてしまうことは誰にでもあるだろう。こうした“反芻思考”は、長く続けるほど心身に悪影響を及ぼすといわれている。その思考を止めて頭をクリアにする方法を紹介しているのが、『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』(ジェニファー・L・タイツ著、久山葉子訳)だ。ストレスを抱えやすい人のために、科学的に実証されたリセット法を多数紹介し、「シンプルなのに効果抜群」「すぐに使える」と絶賛されている。本記事では、グルグル思考から抜け出る方法を本書から引用しながら紹介する。(構成/小川晶子)

「考えすぎ」を一瞬で止めるテクニック・ベスト3Photo: Adobe Stock

後悔や心配事の無限ループから抜け出るには?

仕事で失敗したことや、コミュニケーションのトラブル、未来の心配事……。

「もっとこうすれば良かった」
「あんな言い方しなくてもいいのに」
「本当にうまくいくだろうか」

と、考えても仕方のないことを繰り返し頭の中でつぶやいていることがある。
考えているといってもいっこうに前進せず、同じ場所をグルグルまわっているような感じだ。

そんなグルグル思考は、心理学用語で「反芻思考」と呼ぶらしい。

反芻思考が続くと、気分は落ち込み、不安がつのり、心身に悪影響がある。
かと言って、自分で止めたくてもなかなか止められないので困ってしまう。

グルグル思考を止める方法はないだろうか。

グルグル思考を止めるテクニック3選

『瞬間ストレスリセット』には、メンタルの悪循環をリセットし、ストレスを軽くするテクニックが紹介されている。その中から、グルグル思考を止めるのに最適な方法を3つ紹介したい。私自身、実践してとくに効果を感じたものである。

①書き出す

頭の中でしゃべっていることを、紙の上に出す。すると、客観的に見られるようになり、いつまでも同じことをグルグル考えなくてすむ。

ペンと紙を準備して、邪魔されずに静かに集中できる時間と場所を選ぼう。タイマーを15分に設定し、次のどれかについて書いてみよう。

▶考えていることや心配していること
▶夢見ていること
▶不健康な生活の問題点
▶今まで避けてきたこと

――『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』(p.269)

これは「エクスプレッシブ・ライティング」というテクニックで、研究でも効果が確認されている。

実際やってみると、めちゃくちゃ効果がある。「あの人、なんであんなこと言うんだろう」と思うようなことがあってグルグル思考が始まったら、さっさと紙の上に出してしまうのが良いと思うようになった。

紙に書くだけで「まぁ、自分にも悪いところがあったかもね」と素直に受け入れられるようになるから不思議だ。

②考えるのを後回しにする

考えるのを後回しにするという方法もある。

心配する時間を決めておけば、それ以外は目の前のことに集中できる。
だから自分に合った「心配時間」を選ぼう(ふだんから不安で目が覚めてしまう人は、寝る直前や朝一番は避ける)。タイマーを20~30分にセットするか、15分間×2回を計画して、そのときだけ集中して心配する。飽きたら早めに切り上げてもかまわない。
――『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』(p.266)

あらかじめ心配時間を予約しておけば、安心して目の前のことに集中できるという発想! これは面白い。

たとえば資金繰りの心配や、スケジュールをちゃんとこなせるかの不安などは、予約時間になったら書き出しながら考えるようにすればいいのである。

③大好きな動画を見る

グルグル思考に支配され、気分の切り替えが難しいという場合にはこれ。

「一気に気分がアガる大好きな動画を1~2分見るだけ」だ。

本書には、いろいろな種類の感情を体験できる動画のリストが載っている。

▶映画『チャンプ』のラストシーン
▶サラ・マクラクランの『エンジェル』のミュージックビデオ
▶映画『マラソンマン』の「I`ll give you Szell」のシーン
▶ファレル・ウィリアムスの『ハッピー』のミュージックビデオ
――『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』(p.276)

どれも「2分以上は見なくていい」とのこと。

上は一つの参考だが、誰しも感情が揺さぶられるシーンのある動画が思い浮かぶのではないだろうか。

ちなみに私はアニメ「進撃の巨人」でリヴァイがジークを追い詰めるシーン(第54話「勇者」)を1分見れば気分が上がる。

自分専用の「感情が高まる動画リスト」を作っておけば、グルグル思考から抜け出たいときに役立つのではないだろうか。

どんな感情も浮かんでは消えていくもの

それだけではない。感情の高まる動画を観て、「その瞬間の感情に気を配る訓練をする」ことで、生活の中で湧きあがる感情をコントロールできるようになるという。

本書の著者であるジェニファー・L・タイツ氏は、「人生で解放感を得られるのは、感情は浮かんでは消えていくものだと気づいた瞬間だ」と述べている。

感情が高まる動画を観て泣いたり笑ったりしても、その感情が続くわけではない。その瞬間に完全に入り込めば、感情は自然と消えていくものなのだ。

それが実感できれば、その都度、感情を受け入れつつ、引っ張らないでいられる気がする。

グルグル思考がなかなか止まらずに苦しいときは、ぜひこれらの方法を試してほしい。

(本稿は『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』に関する書き下ろし特別投稿です)

小川晶子(おがわ・あきこ)
大学卒業後、商社勤務を経てライター、コピーライターとして独立。企業の広告制作に携わる傍ら、多くのビジネス書・自己啓発書等、実用書制作に携わる。自著に『文章上達トレーニング45』(同文館出版)、『オタク偉人伝』(アスコム)、『超こども言いかえ図鑑』(川上徹也氏との共著 Gakken)、『SAPIX流 中学受験で伸びる子の自宅学習法』(サンマーク出版)がある。