米政府によるロシア産石油への制裁に効果はあるのか。これはすでに制裁対象となっているロシア北極圏の液化天然ガス(LNG)事業「アークティックLNG2」に目を向ければ、十分に把握できる。同事業はロシア政府の輸出戦略の中核を成しており、米国のバイデン前政権はこれまで複数回にわたり制裁を発動した。施設周辺の物流、海運、資金調達を機能不全に陥らせ、アークティックLNG2を「完全な機能停止状態」にすることを公に目指してきた。だが8月以降、ロシアはアークティックLNG2から、LNGを満載したタンカー11隻を輸送することに成功したことが、船舶追跡データから明らかになっている。これらのタンカーを受け入れたのは、美しい海岸で知られ、かつては古代海上シルクロードの重要な寄港地だった中国南部・北海市の港だ。同港は現在、ロシア北極圏からの制裁対象ガス輸出の重要拠点に浮上している。