時事通信社本社ビルPhoto:JIJI

国内の通信社として最大規模の共同通信と双璧を成す時事通信の収支状況が、悪化の一途だ。2025年3月期は10億円超の赤字を計上し、今期は頼みの綱だった電通からの中間配当が無配となったため、さらなる赤字が見込まれる。依願退職者の増加は止まらず、今期はついに役員らの報酬カットに踏み込んだ。社員からは「もうこの会社にはいられない」との悲鳴も。ダイヤモンド編集部が入手した内部資料から、暗雲立ち込める同社の内情に迫る。(ダイヤモンド編集部 猪股修平)

「命綱」の電通中間配当はなし
時事通信社内で相次ぐ異常事態

 8月下旬、時事通信は社員向けに「中計2027」を公表した。

 サブタイトルは「再生への最終ステップ」。2025年度から27年度までの3年計画をまとめたもので、主に経常黒字の安定的確保と経営基盤の再構築について示している。同社の労働組合ニュースによると「(会社側の)項目の精査に時間がかかり、想定よりも遅れた公表となった」としており、悩み抜いた末での計画案であることがうかがえる。

 社員たちが特に注目しているのは、収支改善の取り組み強化だ。なぜならば、電通グループが25年12月期に黒字予想から一転して754億円の赤字になると明らかにし、中間配当を見送ったからだ。

 時事は9月30日時点で電通株を3.47%保有し、5番目の大株主となっている。電通株の中間配当は、時事の経営を大きく左右する「命綱」と言っても過言ではない。実際、24年9月の中間決算は、電通株の配当減少を主因として10億2000万円の赤字となり、前年同期比で約3億円も赤字額は増えた。

 命綱が切れた今期、時事の社内では数々の異変が生じている。一体何が起きているのか。次ページでは、内部資料や証言から日本最大規模の通信社に吹きすさぶ逆風を明らかにする。