借金とりの森山、突然の「死の報告」

 その頃、トキは流し場で、サワ(円井わん)に花(多分野草)をプレゼント。教師になったお祝いだ。
 川に向かって、「やっと野津サワ先生になれたケーン」「ケーン」と大騒ぎするふたり。
 晴れて小学校の先生となったサワ。この橋の向こうで彼女にどんな苦労があったか想像するしかないけれど、幼い頃と比べていつも浮かない顔をしていたことでなんとなく想像できる。だから思う、よかったね、サワ。

 そこへ、森山銭太郎(前原瑞樹)がやって来た。借金とり・善太郎(岩谷健司)の息子である。

 銭「おやじが先日ぽっくりいきましてね」
 フミ「え」

 フミ「森山さん亡くなったんだって」
 トキ「え」

 フミとトキ、それぞれの驚きの感じにリアリティーがあった。思いがけないときに思いがけない人のおもいがけないことを知らされて言葉もない、そんな体験は誰しもあるだろう。しかも、特別、好きだったりお世話になったりしたわけではない人。むしろ好きじゃなかった人だと驚きはするものの、反応も微妙になる。

 フミとトキ的には小さめな「え」かもしれないが、視聴者的にはわりと大きめな「え」である。
 あの借金とり、突然、亡くなったとは。ナレ死でもなく報告死。なんの予兆もなく。けっこういいキャラだったのに。
 ただ、親父の代わりにインしてきた銭太郎役は前原瑞樹で、朝ドラファンには『らんまん』のウサギ大好き藤丸でおなじみの俳優。好感触である。これもまた銀二郎の代わりに錦織がインしてきたようなものである。

 だが、今回の前原は取り立て屋。
「あるだけ出せい」
 親父の代わりに厳しくやるとぐいぐい迫る。
「ドコ、モ、ジゴク。」の「ジゴク」の門を銭太郎が開ける。

 ただ、銭太郎、ある種、爽快でもあった。
 勘右衛門(小日向文世)に「働け」と言ったのだ。視聴者が思っていたことである。

「爺も刀ふりまわしちょらんで働かんかい」
「借りた金返さんと呑気に隠居してるほうが無礼だが」
 
 言われてみれば、確かにそう。勘右衛門は隠居しているとはいえ、松野家のお家事情を考えたら、刀やよろいを売るだけでなく、何かしら働いてもいいだろう。

勘右衛門(小日向文世)に「働かんかい!」 借金取りの息子・銭太郎の“正論”にスカッとした〈ばけばけ第26回〉

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