司之介(岡部たかし)、ぼったくりすぎでしょ…「牛乳1本20銭」でカモにされっぱなしのヘブン〈ばけばけ第23回〉『ばけばけ』第23回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第23回(2025年10月29日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)

すばらしきかな、「神々の国の首都」

 湯飲みに入ったお茶の水面がかすかに揺れる。どん、どん、という規則正しい音がどこかから聞こえる。

 ヘブン(トミー・バストウ)が目を覚ます。気に入った小ぶりの花田旅館に希望して宿泊することになった。おそらくはじめての朝だろう。

 起きると、まだ薄暗い。1階に降りていくと、音と振動は米をつく作業であることはわかる。

「すばらしい」と感動を覚えるヘブン。日本に着いた初日は遊郭、三味線、侍に出会った。そして、米。

 米をつく作業に感動するなんて「珍しいねえ」とツル(池谷のぶえ)が不思議がる。

 ヘブンは外に出る。

 朝もや、にんじん売り、鐘の音、「もやや、もや」という声、風鈴の音、祈りの拍手……神秘な雰囲気が立ち込めている。これはヘブンの目に映った風景だ。松江の人にとっては当たり前の朝の風景が、彼には神の国に映る。

 松江の神秘的光景は、ヘブンのモデルである小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの著書『知られぬ日本の面影』内、「神々の国の首都」に記されたことをビジュアル化したものである。ハーンの文才を感じる文章なので読むことをおすすめする。もったいなくて引用できない。引き写す手間を厭っているわけでは断じてない。

「すべてが神秘的ですばらしい」「神々の国の首都だ」と夢中で手紙を書いている相手は、イライザ(シャーロット・ケイト・フォックス)。ニューオーリンズの新聞社の同僚で、日本に行くことを勧めた人物だ。一緒に日本に来るのかと思ったら、お留守番のようだ。

 そして、なぜかそのとき、トキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)が通行人にぶつかって運んでいたしじみを地面にぶちまけてしまっていた。不吉なことの暗示であろうか。三角関係の暗喩? 思わせぶりー。って思わず蛇と蛙口調にレビューがなってしまった。