「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』。「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。
この記事では、読者から山口氏に寄せられた人生相談に対する回答を掲載します。(構成:小川晶子)
 Photo: Adobe Stock
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<質問>
役職定年で、上司がみんな年下に。どう気持ちを切り替えればいい?(50代・男性)
役職定年になり、課長昇進前にやっていた業務の担当に戻りました。上司も部長から課長まで全員年下になり、給与も3分の1に減りました。モチベーションを保つため自分をだましながら働いていますが、これから豊かな人生を送るにはどう切り替えればいいでしょうか?
<山口周氏の回答>
出世競争は全員が敗者になるゲーム
大変な状況ですよね。でも、仕方ありません。これは遅かれ早かれやってくるものなんです。
会社の中の出世競争は、最終的に全員が敗者になるゲームです。勝者は一人もいません。社長や会長になったとしても、必ずどこかでお払い箱になって辞めざるをえなくなります。
競争とは本来、勝つことがあり得るゲームのことを言うので、「出世競争」はそもそも無理ゲーなんです。ですから、競争と思わないほうがいいですね。
オプションBの準備をしておく
役職定年によってそれまでの仕事のラインから外れるというのは、誰もが経験する時代になっています。
あらかじめわかっているわけですから、役職定年になったら「オプションB」(次善の選択肢)を発動するための準備をしておくことが重要です。
ご質問者の方はそれをあまりやって来なかったとお見受けしますので、今の環境の中でいかに会社から絞り尽くすかを考えるのが良いのではないでしょうか。
残りの時間は、これまでの働きに対して与えられたボーナスみたいなものだと思って、安定的な給与をもらい、会社のリソースをうまく使いながら、次の人生のステージへの仕込みをするのです。
後半の人生を豊かにするサーバント・リーダーシップ
『人生の経営戦略』の中で紹介したライフ・サイクル・カーブで言うと、50代~60代は「人生の秋」にあたります。次に迎えるのは「人生の冬」で、キーワードは「与える」です。
これまでの人生で培ってきたさまざまな経験によって結晶化された知恵を基に、後進にアドバイスを与え、活躍の機会を与え、成長につながるフィードバックを与える賢者のイメージです。
人生の後半においては人を育てて支援していく「サーバント・リーダーシップ」が人生を豊かにしていく上で重要です。サーバント・リーダーシップは、他者に奉仕しながら導いていくという支援型のリーダーシップです。他者の利益になるようなことを、自分らしく自然にできるような場所を見つけていけるといいのではないでしょうか。
年齢で上下を考えるのは危険
もう一つ付け加えると、「上司が年下」という言葉に引っかかります。
年上とか年下とかいうことは関係ありません。上司が年下であることに不満を持つということは、年下の人を下に見ているのでしょう。その考え方は非常に危険です。サーバント・リーダーシップの考え方では、「すべての人間が自分より上」です。
典型的なのはイエス・キリストで、弟子の足を洗ったわけですね。弟子のペトロが「そんなことはしないでください。私たちの先生なんですから」と言うと、イエスは「拒否するのであれば、私が師匠であなたが弟子という関係は成立しない。師匠である私が足を洗うべきなのだ」と言いました。自ら身を低くするあり方が表れています。
「年下なのに」「年上なのに」と年齢で上下を考えようとするのは非常に悪い癖です。やめたほうがいいですね。
(※この記事は『人生の経営戦略』を元にした書き下ろしです。)





