「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』。「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。
この記事では、読者から山口氏に寄せられた人生相談に対する回答を掲載します。(構成:小川晶子)
<質問>
40代からでも人生は開花しますか? (40代・女性)
就職氷河期に契約社員として就職し、その後は専業主婦です。子育てが少し落ち着き、40代になりましたが、年齢などを考えて無理なく働きたいと思っています。40代からでも開花できますか? やりたいことはいろいろありますが、金銭的な問題やスキル不足で行動にうつせず、とりあえず資金を貯めるためにパートをする予定です。
<山口周氏の回答>
40代から新しいキャリアを築くことはできる
「40代からでも開花できますか」というご質問に対しては「できます」というのが回答です。
40代から新しいキャリアを築いた人はいくらでもいますよ。画家のゴーギャンは証券会社に勤めていて、40歳頃から本業として絵を描くようになり、世界的に有名になりました。
40代からやりたいことをやって、花開かせることはじゅうぶんに可能です。
自分のことを「氷河期世代」と名乗るのは危険
ただ、いくつか気になる点があります。
「就職氷河期」とおっしゃっていますが、こういうことは自分で言わない方がいいですね。「恵まれていなかった」「不幸なスタートだった」と自分を暗示にかけているようなものです。自分で言えば言うほど暗示にかかってしまい、何の得もありません。
もう一つは、「やりたいことはいろいろあるが、とりあえずパート」というロジックがわからないという点です。
『人生の経営戦略』で言っているのは戦略を立てましょうということです。戦略とはロジックです。一つ目にこれをやり、二つ目にこれをやる。そうすると、それがうまくいって最終的に目標が達成できるというメカニズムを作ることです。
戦略に「とりあえず」はありません。
ですから、「とりあえず」で動こうとするのはやめたほうがいいです。そう言っている人はずっと「とりあえず」のまま人生が終わってしまいます。
5年後にこうなっていたい、10年後にこうなっていたい。そのためには今これをやらなくてはいけないというように考えて戦略を立ててください。
僕自身は、15年や20年先には物書きとして世の中に発信する立場になっていたいと考えていました。そのためには書く能力を高めたり、ネタを作ったりしなくてはなりません。そこで、しっかりリサーチして毎週1本ブログを書くようにしていたんです。
時間資本を他の資本に変えていく順番が大事
パートで資金を貯めるのであれば、資金が貯まったあと何をするかが重要です。ただし、いきなり金融資本を増やそうとするやり方は最もうまくいかないパターンです。
本書の「キラースライド」である「人生というプロジェクトの原理」の図を見てください。

時間資本がスタートで、まずはスキル・知識といった人的資本、次に信用・評判といった社会資本、それから金融資本を増やしていき、最終的に「持続的なウェルビーイングの状態」を作るのがゴールです。
この順番が大事です。時間資本をいきなり金融資本に変えようとするのは非常に効率が悪いというのは、本書の最初のほうで指摘していることです。
スキルは経験する中で獲得されていくもので、金融資本が増えたからスキルが上がるということはありません。やりたいことがあるなら、まずはそこから手を付けましょう。お金が足りないのであれば、お金を稼げる仕事と両輪でやっていけばいいのです。
(※この記事は『人生の経営戦略』を元にした書き下ろしです。)