10年前に購入した6000万円のマンション、定年前にローンを完済するには?

 借り入れ当初は金利1%ほどで35年ローンを組んでおり、現在まで毎月17万円弱のローンを返済してきました。順当に返済していけば70歳で完済の予定ですが、定年後の収入が少ない時に住宅ローンが残るのは負担が大きいと考え、60歳の定年を迎える前に返済を終えようと計画しました。

 当初の計画では、住宅ローン控除の適用が終わり、夫が役職定年を迎えるまでの10年間に、毎年200万円程度の繰り上げ返済を実施すれば、夫が60歳になる前に完済できる計算でした。

 しかし、繰り上げ返済の初年度となる今年は、年間50万~100万円程度できるかどうかという状況です。思うように繰り上げ返済資金を捻出できず、このペースでは完済は夫が60歳を過ぎたあとになってしまうのは確実です。

「当初は余裕だと思っていましたが、思ったより貯蓄が進まず、このままでは老後の資金計画にも影響が出ます。どうしたら良いでしょうか」と、サキさんは不安を隠せません。

 まず、家計の収支を拝見すると、手取り月収95万円に対し、支出は92万円です。月の収支の差額はわずかプラス3万円にすぎません。これでは、手取りで年間360万円程度もらえるボーナスも固定資産税や臨時出費で消えてしまい、当初の繰り上げ返済目標には遠く及びません。

住宅ローンを超える「グルメ聖域」の実態

 月92万円の支出の内訳を見ると、住宅ローン(月17万円)や教育費(10万円)、保険料(3万円)といった固定費は、収入に見合った標準的な水準と言ってよさそうでした。

 しかし、驚いたのは、ご相談時に「夫婦共通の趣味である食費とワイン関連支出」と表現されていた、食費・交際費・趣味代に計上された月25万円という額でした。この25万円の中には、ワインを楽しむために外食に出る際、ご両親に子どもを預ける謝礼も含まれています。

 これは、住宅ローンの月額返済額を優に超える、最大の出費項目です。ご夫妻はともに食へのこだわりが強く、週末は予約の取りにくい高級レストランでの外食、平日も週に数回はデパ地下の高級食材やワインを楽しむという生活を送っています。特にワインセラーにストックする高級ワインの購入費が、月々の出費を大きく押し上げていました。

 ご夫妻にとって、食とワインは日々のストレスを解消し、夫婦の絆を深める「生きがい」そのものです。「仕事で頑張っているのだから、これだけは譲れない」と、この「グルメ道」を死守したいという強い意志を持っています。