夫婦間の価値観のズレが招く膠着状態
目標は「ローン早期完済」と「グルメ道維持」で一致していますが、その具体的な達成方法となると、夫婦の意見は大きく異なります。妻のサキさんは詳細に支出を分析したいタイプであるのに対し、夫のケンタさんは「細かいことは面倒。稼ぐ方が手っ取り早い」と考えており、高価な最新ガジェットの衝動買いなど、衝動的な出費も少なくありません。
お互い高収入でありながら、ほかの家庭と比べて支出が高いことを気にしている妻と、稼いでいる分そのくらい使っていいと思っている夫とでは、譲り合いができません。家で話し合うと必ず喧嘩になってしまい、改善に向かうことができないと話すので、私との相談時に、支出の仕方についての話し合いも一気にすることにしました。
「聖域」を守りながら黒字を生み出す方法
結局、ご夫妻が「どうしても死守したい」月25万円の「グルメ出費」を維持したまま繰り上げ返済の資金を捻出するためには、「聖域」以外の出費に厳しくメスを入れるしかありません。そして、何よりも夫婦の価値観を尊重した管理ルールを確立する必要があります。
管理ルールを作るために、面談時には夫婦で穏やかに話し合っているかと思えば、急に火が付いたように意見が対立してしまう場面もありました。その中で、最大の聖域であるグルメ関連出費(月25万円)は、ご夫妻の「量より質」を重視する価値観を尊重しつつ、年間予算を240万円(月平均20万円)に設定して削減を試みることで、話がまとまりました。
また、外食の回数を月1回減らし、ワインは高いものを続けて買わないなど、具体的な削減策も、ご夫婦で決めることができています。そのほか、月8万円程度かかっていた日用品費や被服費、その他の細かな支出も徹底的に見直し、今まで見過ごしてきた「細かなムダ支出」をなくす努力をすると、支出の見直しに意欲を見せています。
住宅ローンの返済に関する不安からのご相談でしたが、それをきっかけに、家計のやりくりの問題やご夫婦での価値観の違いなどが明らかになりました。
山下夫妻の事例は、高い収入がある家庭であっても、「何にお金を使い、何を諦めるか」という価値観のすり合わせができていなければ、たちまち家計が破綻のリスクにさらされることを示しています。グルメやワインは、ご夫妻の生活を豊かに彩る大切な要素です。私たちは、この「聖域」を完全に失うことなく、工夫とルールによって黒字を創出し、安心して将来の計画を立てられる家計を実現してほしいと願っています。
お金の不安から解放され、夫妻がこれからも美味しい食事とワインを楽しみながら、目標通りにローンを完済し、お子さんたちにも経済的な余裕という名の「安心」を残せるよう、心から願っています。







