世界の富裕層たちが日本を訪れる最大の目的になっている「美食」。彼らが次に向かうのは、大都市ではなく「地方」だ。いま、土地の文化と食材が融合した“ローカルガストロノミー”が、世界から熱視線を集めている。話題の書『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著)から、抜粋・再編集し、日本におけるガストロノミーツーリズム最前線を解説。いま注目されているお店やエリアを紹介していきます。
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北極点のレストランに富裕層が殺到するという現実
北緯69度の地にある、氷山が迫る小さな村。人口はわずか50人程度。そんな村に、星付きレストランのシェフが開いた店「KOKS(コックス)」があります。
「そんな僻地に客が来るのか?」と思われるでしょうが、来るんです。しかも、世界中から富裕層が押し寄せているのです。
ご想像に難くないように、アクセスは非常に困難です。店がある島には、ボートまたはヘリコプターでしか行き着くことができません。仮に、東京からそこへ行くとしたら、どのようなルートをたどり、どれくらい時間がかかるか考えてみましょう。
東京→コペンハーゲン(飛行機で12~15時間程度)。コペンハーゲン→グリーンランド西部(飛行機で乗り継ぎを含めて約6時間)。グリーンランド西部→店がある島(ボートまたはヘリコプター。ボートで1時間弱)。実際は、これに乗り継ぎ待機が1日以上加わることもあるので、ざっと2~3日かけての移動になると思われます。費用でいうと、往復100万程度はかかるかもしれません。
ここには、世界一のフーディーである浜田さんのほか、私の友人も数名訪れていますが、聞くところによると、提供される料理は、一般的に美味しいとされているものではないそうです。その代わり、カラスガレイやジャコウウシ、ライチョウのほか、多種多様のハーブやベリーなど極限の地ならではの味を堪能できるとのこと。
美食のためならどこまででも行く富裕層
実は、このシェフは、以前はもう少しアクセスしやすいフェロー諸島という場所に店を構えており、当時ですら訪れるのが世界一困難なミシュランレストランと言われていました。ところが、「客が来すぎる」ということで、さらに北上して現在の地に移転してしまったのです。
かねてより、さらに北方の地で料理の腕を振るいたいと考えてはいたそうですが、より一層アクセスしにくいところへ移転するというのは、常人には考えられない発想です。
とはいえ、もっと驚くべきは、それに負けじと来店する富裕層たちだといえるでしょう。
※本記事は、『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著・ダイヤモンド社刊)より、抜粋・編集したものです。






