Photo:Andrew Harnik/gettyimages
中国通のベテランがかつて私に語ったことがある。中国人は世界的に見ても長期戦略に長けていると。
陳腐な表現だが、それは真実ゆえだ。中国は5カ年計画を次々と実行することで、現代的な産業経済を構築した。外国産エネルギーの契約は決して急がず、完璧なタイミングまで――時には何年でも――辛抱強く待つ。
この「長期戦略」思考の最新例は何か。習近平国家主席による台湾問題への際立った沈黙だ。
先週、ドナルド・トランプ米大統領が韓国で習氏と会談した際、中国にとって極めて重要な「レッドライン」である台湾問題は…なんと、全く問題にならなかった。
状況を考えてみよう。習氏との会談前、トランプ氏は記者団に台湾について話し合うと述べた。会談後の2日に放送された「60ミニッツ」のインタビューで、トランプ氏は習氏が会談中にこの問題を持ち出すことはなかったと語った。習氏と側近らは、台湾に対する軍事行動の「結末を知っている」からだという。
つまり、トランプ氏は自身の政権の姿勢が非常に強固で、その抑止効果が明確であるため、習氏はこの問題について議論する必要性を感じなかった、あるいは議論の余地を見いださなかったと示唆しているようだった。
この件に関して中国の公式声明は一切なかった。
米中関係を追ってきた人なら誰にとっても、この省略は際立っている。1990年代以降、台湾問題は米中首脳会談のたびに話し合われることが予想され、また避けることのできない定番の議題であり、中国指導者はこの問題を提起することに固執してきた。そう指摘するのは、長年ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の中国支局長を務めたチャールズ・ハツラー氏だ。同氏は10年近くにわたって私の原稿の編集を担当した。







