新刊『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「勉強が苦手だったり、勉強をしたくない子どもにもチャンスがある」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、名門校で「深海魚」と呼ばれる子どもたちの実態について解説します。
Photo: Adobe Stock
意外と多い!? 名門校で「深海魚」と呼ばれる子どもたち
みなさんは「深海魚」と呼ばれる子どもたちの存在をご存じでしょうか。中学受験で名門校に合格したものの、入学後に周囲の学力レベルや環境の厳しさについていけず、成績が低迷し、学校生活の中で“沈んでしまう”生徒のことを指します。もともと小学生時代には高い学力や努力で合格を勝ち取ったはずの子どもたちが、難関校という特別な環境の中で劣等感を抱き、自信を失ってしまうのです。
こうした「深海魚」になってしまう生徒の姿は、決して珍しいことではありません。実際、進学校の内部では「下から◯番目」という序列が常に意識され、平均点が非常に高いため、少しでもつまずくと一気に“底”に沈んでしまうこともあります。そしてその状態が長く続くと、勉強への意欲を失い、学校生活自体に居場所がなくなってしまうことさえあります。
しかし一方で、「深海魚」となりながらも自分の強みや興味を見つけ、それを生かして大学合格につなげる生徒もいます。挫折を経験したからこそ新たな視点を得て、一般入試ではなく推薦入試や総合型選抜といった別の道を切り拓くケースも少なくありません。
今回は、私が実際に取材した「深海魚」の生徒の一人をご紹介します。名門御三家で底辺に沈み続けた6年間を過ごしながらも、自分の興味を探究活動に結びつけ、逆転合格を果たした彼女の物語です。
御三家で“深海魚”になった女子生徒の逆転合格
中学受験で、「御三家」と呼ばれる東京屈指の名門女子校に入学したAさん。
しかし彼女は中学に上がってからは燃え尽き症候群のような状態になってしまい、朝テスト、補習、再追試とたくさんの試験に嫌気がさしてしまいました。勉強が嫌いになり、6年間を通じて成績は常に下から数えて10番以内。数学で5点、英語で20点といった衝撃的な点数を繰り返し取るようになってしまい、優等生ばかりの環境に馴染めず、勉強への意欲も失っていったのでした。
それでも、Aさんには「気になったことには徹底的に取り組む」という強みがありました。高校では原子力発電をテーマに探究活動を展開し、その取り組みを推薦入試でアピール。一般入試では到底届かないと言われる学力状況から、関関同立の上位学部への合格を果たしました。
開成や桜蔭からGMARCH不合格になるケースも
Aさんの場合は、自分の興味を見つけ、それを探究することで大学入学を実現しました。しかし、同じように「深海魚」になってしまった生徒の中には、最後まで浮上できず、勉強が嫌いなままで卒業してしまうケースもあります。開成や桜蔭といった日本トップクラスの最難関校に通う生徒であっても、最終的にGMARCHですら不合格となってしまうケースもあります。
どれほど偏差値の高い中学・高校に合格しても、その後の環境に合わず勉強の意欲を失ってしまえば、一気に成績は落ち込み、大学受験で不本意な結果に終わってしまうことがあります。
Aさんの例から見えてくるのは、学校選びは「偏差値の高さ=安心」ではなく、子どもの性格や学び方との相性を重視すべきだということです。合格実績やブランドにとらわれるのではなく、「その子がそこでどう学び、どう成長できるのか」という観点を持つことが、これからの時代の教育選択においてますます重要になるのではないでしょうか。
(この記事は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』を元に作成したオリジナル記事です)




