「このままここに会社にいていいのか」「辞めたほうがいいのか」。頭の中で何度も同じことをぐるぐる考えてしまう――そんな葛藤を抱えている人は少なくない。そんな人におすすめなのが大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』(クルベウ著/藤田麗子訳)だ。本書では仕事を辞めるかどうか迷っている人に、社会人経験の長い先輩が「仕事を辞めるかどうかの基準」を静かに伝える印象的なエピソードが登場する。本記事では、そのエピソードをもとに、「仕事を辞めるかどうかの基準・ベスト3」を紹介する。転職するか、このまま踏ん張るか悩んでいる人は、自分の心の状態をチェックするつもりで読んでみてほしい。(構成/ダイヤモンド社・林えり)

【もう限界】仕事を辞めるかどうかの基準・ベスト3Photo: Adobe Stock

前提として「どんな会社でも100%満足はない」

本書にはこんな一節があります。

「どんな会社に入っても、100%気に入ることはないものだよ」
――『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』より

理想の会社に入っても、「仕事に行きたくない」「このまま続けていいのか」と悩むことはある。

だからといって「悩んでいる=すぐ辞めるべき」とはかぎらない――。

そのうえで、先輩は「それでも、辞めることを前向きに考えていいケース」があると、3つのポイントを挙げています。

① 今の職場に「好きだと思える人」がひとりでもいるか

先輩が最初に指摘したのは、「一緒に働く人」の存在です。

本書では「辞めたい気持ちがずっと続く」のは、「今の職場に好きだと思える人がひとりもいない」からではないか、と述べるシーンがあります。

どれだけ仕事内容がよくても、どれだけ条件がよくても、

・話すとホッとする相手がいない
・味方だと思える人がいない
・愚痴ではなく本音をこぼせる相手がいない

こんな状態がずっと続いていると、心はすり減っていきます。

逆に、仕事が大変でも「この人たちと一緒なら頑張れる」と思える仲間がひとりでもいれば、踏ん張れることも多いものです。

今の職場で、「顔を思い浮かべると嬉しくなる人」がいるかどうか――それは、会社を辞めるかどうかを考えるうえで、とても大きな基準になります。

② 業務が自分の適性・やりたいことと合っているか

次に問うべきは、「仕事内容と自分の相性」です。

本書では、辞めることを考えてしまう原因として
「業務が自分の適性にまったく合っていない」「やりたいことが新しく見つかった」という点をあげています。

本書では、合わない会社を「サイズの合わない靴や服」にたとえています。

小さすぎる靴を無理して履き続ければ、足が痛くなるように、

どう頑張っても成果が出ない
・そもそも興味が持てない
・やればやるほど自己肯定感が下がる

といった状態が続くなら、それは「自分のサイズと仕事のサイズが合っていない」サインかもしれません。

一方で、「やりたいことが新しく見つかった」場合、今の会社でそれが実現できないのであれば、環境を変えることが、自分の可能性を広げる一歩になることもあります。

③ 報酬と心の負担が釣り合っているか

三つめの基準は、お金と心のバランスです。

「気苦労が多くなれば、稼ぎが増えてもその金を結局ストレス解消に使ってしまうことになる。そうなったら何も残らないし、得るものもない」
――『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』より

本書では先輩から「今より給料が高くて居心地の悪い会社」と「収入は減るけど気楽に働ける会社」どちらを選ぶか、という問いを投げかけられるシーンがあります。

給料が高いのはたしかに魅力です。けれど、

・心が休まらない
・いつも胃がキリキリしている
・休みの日も仕事のことで頭がいっぱい

こうした状態が続くと、増えたお金は「自分をすり減らした代償」を埋めるために消えていきます。

「働く対価として、納得できる報酬をもらっているか」
「その報酬は、心身の負担に見合っているか」

この2つの問いに「いいえ」が続くなら、「辞める」という選択肢を真剣に検討してもいいのだ、と本書は静かに背中を押してくれます。

「安全な場所」が自分を苦しめていないか

最後に、本書にはこんな強いメッセージが綴られています。

「もし、『安全な場所』が自分を苦しめるのなら、僕たちは、その場所を捨てて新たな地を目指さなければならない」
――『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』より

慣れ親しんだ会社や仕事は、たしかに「安全な場所」に見えます。

でも、その安全さがあなたの心を追いつめているのだとしたら――そこから離れる勇気もまた、立派な自己防衛です。

仕事を辞めるかどうか迷ったときは、

 1 今の職場に「好きだと思える人」がいるか
 2 仕事が自分の適性や「やりたいこと」と合っているか
 3 報酬と心の負担が釣り合っているか

この3つの基準を、静かに自分に問いかけてみてください。

そのうえで選んだ道であれば、「あのときちゃんと考えて決めた」と、自分を信じる力にもつながっていくはずです。

『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』は、人生の岐路に立ったときにぜひ読みたい1冊。

仕事、人間関係に迷ったときには、そっと手に取ってみたらいかがでしょうか。

(本稿は『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』を元に作成しました)