メリットは読解だけじゃない!「書く力」が一変する

この「抽象」と「具体」を行き来する力は、文章を読むときだけでなく、あなたが文章を書くときにも絶大な効果を発揮します。

たとえば、感想文や小論文で「何を書けばいいかわからない」と手が止まってしまうことはありませんか? そんな時こそ、「まとめていうと、一番言いたいことは何か?(抽象化)」をまず決めます。

次に、「たとえば、それを裏付けるエピソードは何か?(具体化)」を探すのです。この「幹(抽象)」と「枝葉(具体)」の構造を意識するだけで、あなたの文章は驚くほど論理的で説得力のあるものに変わります。

会話やプレゼンも得意になる「伝える力」

さらに、この力はコミュニケーション能力そのものを鍛え上げます。「結局、何が言いたいの?」と相手に聞き返されてしまう人は、具体的な話(下)ばかりで、「要するに(上)」が抜けているのかもしれません。

逆に、抽象的な話ばかりで「具体的にどういうこと?」と思われがちな人は、「たとえば(下)」が足りないのです。日頃から「上」と「下」を意識することで、相手が今どちらの情報を求めているかを察知し、的確に言葉を使い分けることができます。

会議での発言や友人との会話、将来のプレゼンテーションまで、あらゆる場面で「わかりやすい人」という評価を得られるでしょう。

思考の「解像度」が上がり、問題解決にも役立つ

このトレーニングがもたらす最大のメリットは、物事の本質を捉える「思考力」が身につくことです。目の前で起きている複雑な問題(具体)を、「まとめていうと、これは◯◯の問題だな(抽象)」と捉え直すことができれば、冷静に対処できます。

また、一つの解決策(具体)に行き詰まったときも、「抽象」のレベルに戻って、「たとえば、他に似たような例はないか?」と別の具体的なアプローチを探すことができます。「抽象」と「具体」の往復運動は、思考を柔軟にし、解像度を上げ、これまで見えなかった解決策を発見する「武器」となるのです。

一生モノの「知的なクセ」を身につけよう

この「まとめていうと」「たとえば」という問いかけは、単なる勉強テクニックではありません。世界を深く理解し、自分の考えを的確に表現するための、一生モノの「知的なクセ」です。

このクセを今身につけておくことが、テストの点数以上に、将来を豊かにする確実な投資となります。ぜひ、今日から意識してみてください。

※本稿は、『成績アップは「国語」で決まる! 偏差値45からの東大合格「完全独学★勉強法」』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。