「構想力・イノベーション講座」(運営Aoba-BBT)の人気講師で、シンガポールを拠点に活躍する戦略コンサルタント坂田幸樹氏の最新刊『戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』(ダイヤモンド社)は、新規事業の立案や自社の課題解決に役立つ戦略の立て方をわかりやすく解説する入門書。企業とユーザーが共同で価値を生み出していく「場づくり」が重視される現在、どうすれば価値ある戦略をつくることができるのか? 本連載では、同書の内容をベースに坂田氏の書き下ろしの記事をお届けする。
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なぜ、同じ環境でも
「折れる人」と「耐える人」がいるのか?
ビジネスの現場では、同じ仕事量や責任を担っていても、プレッシャーの受け止め方には大きな差があります。
プレッシャーに強い人は、「多少うまくいかなくても、この経験は将来に活きる」と前向きに捉えます。
一方、プレッシャーに負けてしまう人は、「今失敗したらすべて終わる」と思い込み、自らを追い込んでしまいます。
私自身、駆け出しの経営コンサルタントだった頃、目の前の作業に埋没して苦しくなった経験があります。そんなとき、先輩コンサルタントからかけられた言葉が、今でも強く記憶に残っています。
「このプロジェクトの本来の目的を常に考えろ。」
この一言が私の視点を一段引き上げ、プレッシャーを乗り越える転機となりました。
プレッシャーに強い人は、“抽象化”している
両者の違いの根底にあるのが、目標の抽象度です。
すぐに折れてしまう人ほど、「次の評価」や「今期の数字」といった短期的な成果に縛られがちです。
一方、プレッシャーに強い人は、「3年後どんな自分でいたいか」「社会にどう貢献したいか」といった中長期的な目的を見据えています。
たとえば、「今期の営業ノルマを達成する」という目標も、「お客様の課題を解決し、喜ばせる力を磨く」と捉え直すことで、ただのプレッシャーではなく、自分を成長させる経験へと変わります。
抽象度を上げることで、「失敗=人格の否定」ではなく、「成長のプロセスの一部」として受け止められるようになるのです。
この“視点のデザイン”こそが、プレッシャーをエネルギーに変えるための思考法です。
目標に“ひとつ上の意味”を重ねるだけで、
心が折れにくくなる
短期目標だけに意識が集中すると、人は「できた/できない」に一喜一憂しがちです。
しかし、その目標の“ひとつ上の目的”を意識するだけで、日々の行動の意味が広がり、気持ちが折れにくくなります。
たとえば、
・「昇進したい」ではなく、「後輩が安心して働けるチームを作りたい」へ
・「売上を伸ばす」ではなく、「お客様にとって、なくてはならない存在になる」へ
こうした“ひとつ上の目的”が付与されるだけで、自分の仕事が意味を持ち、やりがいが生まれます。
そしてこの考え方は、まさに書籍『戦略のデザイン』で解説している“抽象度を上げて目的から考える”という戦略思考とも共通しています。
プレッシャーを感じたときこそ、自分に問いかけてみてください。
「この仕事の先に、自分は何を実現したいのか?」
もし今、「数字に追われて苦しい」「仕事のプレッシャーに押しつぶされそう」と感じているなら、このような視点の切り替えが必要です。
視点が変われば、行動が変わり、行動が変われば、未来が変わります。
プレッシャーを感じたときこそ、“視点を上げる”一歩から始めてみませんか?
IGPIグループ共同経営者、IGPIシンガポール取締役CEO、JBIC IG Partners取締役。早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)。ITストラテジスト。
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト・アンド・ヤング(現フォーティエンスコンサルティング)に入社。日本コカ・コーラを経て、創業期のリヴァンプ入社。アパレル企業、ファストフードチェーン、システム会社などへのハンズオン支援(事業計画立案・実行、M&A、資金調達など)に従事。
その後、支援先のシステム会社にリヴァンプから転籍して代表取締役に就任。
退任後、経営共創基盤(IGPI)に入社。2013年にIGPIシンガポールを立ち上げるためシンガポールに拠点を移す。現在は3拠点、8国籍のチームで日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。
単著に『戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』『超速で成果を出す アジャイル仕事術』、共著に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(共にダイヤモンド社)がある。




