あなたの職場には、「なぜか味方が多い人」がいないだろうか。特別に人当たりがいいわけでも、話がうまいわけでもないのに、気づけば周りが協力してくれて、上司や他部署も巻き込んで仕事が前に進んでいく。そんな人がやっていることの1つが、社内資料における“ある工夫”だ。400以上のチームを見てわかった「仲間と協力するのがうまい人の共通点」をまとめた書籍『チームプレーの天才 誰とでもうまく仕事を進められる人がやっていること』(沢渡あまね・下總良則著、ダイヤモンド社刊)から、そのコツを紹介しよう。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

職場に「味方が多い人」が資料作成で必ずやっている“たった1つのこと”Photo: Adobe Stock

社内を巻き込むための「最高のツール」

 上長や他部署など、社内の他者を巻き込むためにおすすめしたい技を1つ紹介します。

 何か新しいことを始めようとするとき、避けて通れないのが社内決裁です。
 その際に提出する決裁文書や稟議書は、それ自体が、あなたのテーマやストーリーを社内の人たちに知ってもらうための強力なツール

 回覧される部署や人が多ければ多いほど、それだけ多くの人の目に留まる。いわば社内視聴率が高い。この特性を利用しない手はありません。

社内文書の「タイトル」にメッセージを込める

 そこで、決裁文書や稟議書のタイトルにキーワードやストーリーを込めましょう。

 たとえば、あなたがウェルビーイングを高める活動を始めたいとします。
 そのためには決裁を仰ぐ必要がある。
 一方で、社内にはウェルビーイングに関心がない人や、言葉さえ知らない人も多い。

 そんなときは、提出する資料のタイトルや本文に「ウェルビーイング」を必ずちりばめましょう(もちろん解説は欠かさずに)。

「コンセプト」を伝えて共感を得る

 また、「ウェルビーイングを高めたい」というのはあなたのストーリーであり、それだけでは他者のストーリーと合致しません。
 そこで「働くストレスを減らすために」「みんなが仕事に前向きになるように」などを明示する、つまりコンセプトによるブランディングをしてみます。

 たとえ最終決裁者に否決されたとしても、資料を見たあなたの上長やその上の役職者、あるいは審査者や他部署の人がウェルビーイングを認知し、そのコンセプトやストーリーに関心を持ってくれるかもしれません。

決裁文書にあったウェルビーイングって気になるんだけれど、どういうことか説明してもらえます?」
「私もチームのストレスを減らしたいと思っていました」

 と、意外な第三者が味方になってくれることもあります。

 今回は決裁が通らなかったとしても、「認知は広がった」「仲間が見つかった」と前向きにとらえ、時が来たら(別のタイミングで)再チャレンジすればいいでしょう。
 何かと面倒くさい業務プロセスや事務手続きも、「使いよう」なのです。

(本稿は、書籍『チームプレーの天才 誰とでもうまく仕事を進められる人がやっていること』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)

沢渡あまね(さわたり・あまね)
企業顧問(組織開発&ワークスタイル変革)。あまねキャリア株式会社CEO/一般社団法人ダム際ワーキング協会代表。プロティアン・キャリア協会アンバサダー。磐田市“学び×共創”アンバサダー。『越境学習の聖地・浜松』『あいしずHR』『読書ワーケーション』主宰。大手自動車会社、NTT データなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。主な著書は『組織の体質を現場から変える100の方法』(ダイヤモンド社)、『新時代を生き抜く越境思考』『EXジャーニー』『バリューサイクル・マネジメント』『職場の問題地図』(いずれも技術評論社)など。
下總良則(しもうさ・よしのり)
東北工業大学准教授(デザイン経営分野)/usadesign代表/一般社団法人 デザイン経営研究所 代表理事/一般社団法人RAC理事。多摩美術大学を卒業後、商品企画担当者・プロダクトデザイナー、グラフィックデザイナーを経て、usadesignとして独立。フリーランスデザイナーとして、世界シェア第3位の広告代理店ピュブリシス傘下ビーコンコミュニケーションズや、ネクストユニコーンをはじめとするスタートアップ企業にジョインし、「デザインと経営学」をテーマに活動を広げる。グロービス経営大学院修了MBA取得。著書に『インサイトブースト 経営戦略の効果を底上げするブランドデザインの基本』(ハガツサ)がある。