『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』(ロジャー・ニーボン著/御立英史訳、ダイヤモンド社)は、あらゆる分野で「一流」へと至るプロセスを体系的に描き出した一冊です。どんな分野であれ、とある9つのプロセスをたどることで、誰だって一流になれる――医者やパイロット、外科医など30名を超える一流への取材・調査を重ねて、その普遍的な過程を明らかにしています。今回は「仕事ができる人」ほど意識するミスしたときの考え方について『EXPERT』の内容を元にお届けします。(構成/ダイヤモンド社・森遥香)

仕事ができるPhoto: Adobe Stock

“前よりましな失敗”が成長につながる

仕事をしている限り、ミスは避けられません。どれだけ経験豊富な人であっても、判断を誤ったり、見落としたり、想定外の事態に遭遇したりします。

では、「仕事ができる人」は、ミスにどう向き合っているのでしょうか。

実は、仕事ができる人ほど、ミスを「反省すべきもの」と「しょうがないもの」に分けて考えています。

失敗のなかには非難されるべきものもあれば、そうではないものもある。
『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』より

彼らは、この線引きを正しく行っています。誰でも不可抗力のミスや、挑戦の途中に起きる“健全な失敗”をするものです。それらまで過度に責める必要はありません。

むしろ、適切な反省と改善につなげることこそが、仕事の質を高めます。

復元力(レジリエンス)が、成長速度を左右する

仕事が速く、成果を出す人に共通するのは、ミスしたあとに素早く立て直せる力を持っていることです。

達人になるためには、失敗したときの復元力を養うことが必要だ。
『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』より

この「ちょうどよいマインドセット」を保てるかどうかが、成長の速度を決めます。

仕事ができる人の多くが大切にしている姿勢を、アイルランド出身の有名作家サミュエル・ベケットは名言として残しています。

「やってみたか。失敗したか。気にするな。もう一度やれ。また失敗しろ。だが前よりましな失敗をしろ」
『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』より

この言葉が示しているのは、失敗をゼロにする努力ではなく、失敗の質を変えていく努力です。自分に原因があるミスを起こしてしまったら、同じミスを繰り返さない、発生した原因を少し深く理解する、次に同じ場面が来たら、よりうまく対処するといった形で、「前よりましな失敗」を積み重ねることが重要です。

結局のところ、ミスのないキャリアなど存在しません。むしろキャリアの深みは、ミスから立ち直った数だけ増していきます。

仕事ができる人は、ミスを恐れません。恐れないから挑戦するし、挑戦するから成長します。

そしてベケットの言葉を借りれば、「前よりましな失敗」を積み重ね続けた結果として、気づけば「仕事ができる人」になっているのです。

(本記事は、ロジャー・ニーボン著『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』を元にした記事です。)