【マンガ】社長はイケイケなのに社員が去っていく会社の「思わぬ落とし穴」『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第45回では、東証プライム市場について解説する。

「戦うことが大好き!勝つのが大好き!」

 証券アドバイザー・牧信一郎との対話を通して、自らが起こしたアパレル企業・ハナオカのIPO(新規上場)を決意した主人公・花岡拳。そんな花岡に牧は、上場に関する説明資料を手渡し、会議の場を去るのだった。

 その後、1人で牧からの資料に目を通す花岡。そこには東京証券取引所の市場第一部(現在の東証プライム市場)や同・第二部(同、スタンダード市場)に上場する条件が書いてあるのだった。

 IPOや上位市場へのくら替えのために求められる条件を読んで、その規模に驚く花岡。だが、あらためてこう自身に問いかけるのだった。

「俺はホントに上場したいのか…上場してどうする? 上場したあとなにがしたいんだ?」

「いや…違うよ。俺はそんなやつじゃねえ」

「戦うことが大好き!勝つのが大好き!勝って勝って上へ上へ昇っていくのが好きなやつじゃねえか!」

 花岡はかつてプロボクサーとしてチャンピオンにまで上り詰めた記憶を思い出し、新興市場へのIPO、そしてそこから東証一部という「頂上」までを目指すと、新たに決意するのだった。

日本の頂点「東証プライム市場」の定義とは

漫画マネーの拳 6巻P5『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

 先ほども注釈を入れたが、漫画の連載から時がたち、2022年には東証の市場再編が行われた。漫画に出てくる東証一部、二部のほか、ジャスダック、マザーズ、ヘラクレスといった新興市場も含めて、上位からプライム市場、スタンダード、グロースという3つの市場に再編された。

 2025年には、東証が新興市場であるグロース市場の上場維持基準の変更をアナウンスしており、これがスタートアップのIPOにも影響を与えるなど話題だ。だが今回は文字数の都合もあり、まず花岡たちもゴールに見据える、東証プライム市場について解説する。

 東証が定義するところによると、プライム市場の役割は「多くの機関投資家の投資対象となるのにふさわしい時価総額(流動性)」「より高おガバナンス水準の具備と投資家との建設的な対話の実践」「持続的な成長いと中長期的な企業価値の向上への積極的な取組み」とのこと。

 つまり膨大な額の資金を運用する海外の機関投資家が株式を求めるような、日本が誇る企業をラインアップする市場とも言える。

 当然ながらその新規上場(他の市場からのくら替えも含む)や、上場維持の基準も他の市場よりもハードルが高いものになっている。新規上場基準として求められる要件は、株主数800人以上、流通株式数2万単位以上、流通株式時価総額100億円以上、売買代金が時価総額250億円以上といった具合だ。

 収益面では「最近2年間の利益合計が25億円以上」もしくは「売上高100億円以上かつ時価総額1000億円以上」という条件に加えて、「純資産額50億円以上」という健全な財務状況が求められる。さらに、コンプライアンスやコーポレートガバナンスに関して、健全性を説明できることが必須となっている。

 企業として非常にハードルの高い指標を求められるが、だからこそ海外の機関投資家の資金を調達し、安定的な株主を確保して経営に臨めるわけだ。

 その時価総額上位にはトヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ、ソフトバンクグループ、ソニーグループといった日本を代表する企業が並ぶ。また、かつてはスタートアップと呼ばれたような、創業10〜20年程度の比較的若い企業としては、SHIFTやZOZO、ビジョナル、ANYCOLOR、メルカリなどが並ぶ。

 牧からの忠告もあって、創業期に入社した中核メンバーにすらIPOの計画を相談していない花岡。だが彼らはすでに上場に対してさまざまな思惑を持っているのだった。次回、花岡は彼らの厳しい対応に直面する。

漫画マネーの拳 6巻P6『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
漫画マネーの拳 6巻P7『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク