
『反国家分裂法』制定から20年
平和的統一が最優先だが武力行使は放棄しない
今から20年前の2005年3月14日、中国の国会に相当する全国人民代表大会が『反国家分裂法』という名の法律を制定した。胡錦涛政権が本格始動してから2年程度が経過した頃のことである。
その第一条には次のように記されている。
“台湾独立”分裂勢力が国家を分裂させることに反対し、それを封じ込め、祖国の平和的な統一を促進し、台湾海峡地域の平和と安定を守り、国家の主権と領土の保全を守り、中華民族の根本的な利益を守るために、憲法に基づき、この法律を制定する。
端的に言えば、台湾問題を解決する、すなわち中国共産党にとっての悲願である「台湾統一」という国家目標を達成するために制定した法律である。国家の分裂に反対し、それを防ぐこと、国家を分裂させる行為を封じ込めることを法律的に正当化したという意味で、中国の国家としての方向性や政策目標を理解する上で極めて重要な動向であった。
当時筆者は北京で学んでいたが、少なくとも、中国が台湾問題の解決に向けて、アクセルを踏んだ、「台湾統一」を実現するための政策や言動を、従来以上に積極的に打ち出してくるという雰囲気を現地で感じたものである。
同法第五条には次のように書いてある。
平和的方式で祖国統一を実現することは、台湾海峡両岸の同胞の根本的利益に最も符合する。国家は最大限の誠意と努力をもって、平和的統一を実現する
と同時に、第八条には次のようにも書いてある。
“台湾独立”分裂勢力がいかなる名義、方式で台湾を中国から分裂させる事実を招いた場合、あるいは、台湾が中国から分裂する重大な事変を招いた場合、あるいは平和的統一の可能性が完全に喪失された場合、国家は非平和的方式、および他の必要な措置を取ることで国家の主権と領土の保全を死守する
要するに、平和的統一を最優先する、しかしながら、それが困難である場合、あるいは中国共産党の政治判断として、その可能性が完全に失われた場合、非平和的な方式、すなわち、武力による統一も辞さないという意味である。20年前の時点で、「平和的統一を最優先する、ただ武力行使は放棄しない」という立場を明確に謳っているという事実を、我々は改めて認識するする必要があるだろう。