無茶なお願い、突然の割り込み、終わりのない雑談。どんな職場でも毎日起こっていることだ。こうした「時間泥棒」にどう対応するかで、一日の集中力も、人生全体も大きく変わってくる。では、一流の人たちはどうしているのか? 18言語で話題の世界的ベストセラー『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』から、訳者の栗木さつき氏にヒントをうかがった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
Photo: Adobe Stock
まわりから来る仕事を全部やっていたらキリがない
――『一点集中術』では、集中のためにまわりを遮断したり、メールに即レスしないといった話も紹介されています。これはまわりに迷惑では、と気になる人もいそうです。
栗木さつき氏(以下、栗木):一点集中術を実践するうえで、「他者からの期待」は大きな壁になるんですよね。ですが本書が強く訴えているのは、そもそも人からの仕事に全部対応する必要なんてないということです。
ただ、それでうまくやるには、自分の行動を変えるだけでなく、まわりからの「期待」も変えていく必要があるんです。以下は本書からの引用です。
「シングルタスクに集中するには、まわりを遮断しなければならない。だが人からの要請にはすぐに応じないと相手に失礼だから、シングルタスクなんてできない」と。
シングルタスクを実践するには、自身の「習慣」を変えるだけでなく、ほかの人があなたに寄せる「期待」も変えていかなければならない。(中略)
すべての質問や問い合わせに、即座に応じる必要などない。そもそも、そんなことは不可能だし、そんな真似をしていたらすぐに燃え尽きてしまう。――『一点集中術』
まわりの「期待」をコントロールする
――相手の「期待」をコントロールするには、どのようなコミュニケーションを取るべきでしょうか。
栗木:依頼が来たときの対応がカギになります。たとえばクライアントからメールで納期の短い無茶な仕事が飛びこんできたとします。
最悪なのは、対応方法がわからなくて放置してしまうこと。これでは信用問題につながります。
また、とりあえず「頑張ります!」と言って受けるのもNG。結果的にできたとしても、いつもそれでは便利使いされてこちらは疲弊していきます。
なので、まずは「ご連絡ありがとうございます」と丁寧に応答して、そのうえで「のちほど改めてご連絡します」や、「◯時に改めてご連絡します」などと、こちらの都合を明確に伝えます。
こうすることで、相手は「放置された」と感じるのではなく、「いまは別件に集中しているけど、確実に対応してくれる人だ」と受け止めます。
そうして状況を整理する時間を稼いで、そもそも対応可能かどうかを含めて検討して、「これはできる」「これはできない」ということを切り分けてから、はっきりと返答します。
相手から見ても、できるかどうかわからないうやむやな態度だと次のステップに移れなくて困りますが、事情を言ってスパッと答えてくれるのであれば、たとえ「できない」ということでも、仕事相手として信頼できます。
「仕事が遅い」という指摘にどう対応するか?
一方で、「仕事が遅い」「なんでこれができていないの?」といった不要な割り込みや細かい批判が入るケースもありますよね。こういうことは、その場で議論しても、生産的にならないことがほとんどです。
こういうときは感情で応戦するのではなく、「ご指摘ありがとうございます」と冷静に返して、淡々と仕事で返す。これが最も確実で、プロフェッショナルなやり方です。
――冷静に返して、さくっと自分の仕事に戻る。それがまわりに振り回されないためのコツなんですね。
栗木:その通りです。重要なのは、自分のペースを守って、時間と集中力を他人に明け渡さないこと。
「いまはこの仕事に集中する時間」「連絡を返す時間」といった自分の側の時間設計を自分にも相手にもはっきりさせることが、仕事の質を守るためのいちばんの防衛策になります。
(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』の翻訳者インタビューです)









