こんな人はいないだろうか。「頭はいいのに、なぜか成果が伸びない」「一日中忙しく動き回っているのに、終わってみると何もできていない」「やることが多いのに、どれも中途半端で前に進まない」思い当たるところがあるなら、カギになるのは「一点集中」の力かもしれない。18言語で話題の世界的ベストセラー『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』について、訳者の栗木さつき氏にお話をうかがった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

高学歴なのに「なぜか仕事ができない人」の特徴・ワースト1Photo: Adobe Stock

賢いのに、なぜ成果が出ないのか?

――高学歴で知的能力が高いにもかかわらず、成果の面ではなかなか結果が出せないというケースが職場でよく見られます。何が問題だと思われますか?

栗木さつき氏(以下、栗木):本書の著者は、「マルチタスクは絶対にダメ」と言っています。

 自分の能力に自信がある人は、とくにいろんなことに手を出してしまいがちです。

 でも脳はタスクを切り替えるのにもエネルギーを使うので、結果としてすべてが中途半端になってしまいます。そのため、分析したり細部を組み立てたりと多忙に動き続けているわりにはたいした結果は得られないということになってしまいます。

――でも次々と急ぎの要件がある場合は、どうすればいいのでしょう?

栗木:それならば、「優先順位」をつけて集中して対応するというのがシンプルな解決策になります。とくに大事な仕事については、しっかりとスケジュールを押さえてしまいます。その他のタスクも、大事なものから一点集中で解決していくんです。

 これについて著者は、「重要な少数(バイタル・フュー)の法則」というものを紹介しています。

 ジョセフ・ジュランはジョセフ・デフェオとの共著『ジュランの品質ハンドブック』(未邦訳)のなかで、「重要な少数(バイタル・フュー)の法則」として「重要なものはごくわずかしかない」と説明している。
 いわく、質の高い仕事をする鍵は「些末な多数(トリビアル・メニー)」と「ごくわずかな重要なもの(バイタル・フュー)」を区別することにある。
 そのためには、自分のタスクをていねいに見なおし、最重要のタスクと、とりあえず後回しにできるものとを区別するとよい。――『一点集中術』より

 この法則が意味するのは、私たちはさまざまなタスクを処理しようとエネルギーを分散させるのではなく、「ごくわずかな重要なこと」に全集中するべきだということです。

 まず最重要タスクを終えてから、残りのタスクに取り組むというプロセスを経ることで、そもそも「しなくていいタスクだった」というものも出てきます。これを切り捨てることが、非効率を排除し、成果の質を高める最短ルートになります。

人生でも、やるべきことに一点集中する

――仕事の話だけでなく、人生全般にも関わってくる話ですね。

栗木:はい。これはテクニックというよりメンタルとかマインドセットの問題と言えるかと思います。「大きな成果を手にするには、必ず何かを捨てなくてはならない」という話です。

 目の前にあるタスクや思いついたこと、誰かから振られる仕事などに次々と反応しているだけだったら、いつまでも他人のために時間を使い続けることになります。

 自分が「本当にやるべきこと」を自覚して、それに全集中する環境をつくるということが、本書の伝える最重要のメッセージです。

(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』の翻訳者インタビューです)