イヤミを言われたときは、つい言い返したくなる。けれど感情的に反応しても、モヤモヤが残るだけで、状況がよくなるとは限らない。では、頭のいい人は、そうしたチクリと刺さる言葉にどう対応しているのか? 18言語で話題の世界的ベストセラー『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』から、訳者の栗木さつき氏にヒントをうかがった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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イヤミを言ってくる人はどこにでもいる
――職場でもプライベートでも、イヤミを言ってくる人がいますよね。そんな相手にはどうすればいいですか?
栗木さつき氏(以下、栗木):イヤミを言ってくる人は相手を嫌な気分にさせようとしてるわけですよね。ですから感情的に反応しないことが一番の反撃になります。何かぐちゃぐちゃと言われたとしても、まずは「なるほど、そうだよね」とか、職場なら「ありがとうございます」と応じる。自分の精神衛生も考えると、相手の土俵に乗らないことが大事です。
――だいぶ大人な態度ですね。
栗木:感情的に応戦しても、生産的な結果にはなりません。大事なのは、相手のペースに巻き込まれないことです。その場では落ち着いて受け流し、必要なら後から冷静に対応する。その姿勢がいちばん賢いんじゃないでしょうか。
――日本人的といいますか。
栗木:たしかに(笑)。和を重んじるというのは、ある種の知恵ですよね。喧嘩を売られても「ご指摘ありがとうございます」と言える文化はなかなかないかもしれません。でも、同じ土俵に立って言い合いをしても、得るものは何もないですから。
――「君子、危うきに近寄らず」とも言いますしね。
栗木:その通りです。毎日、一点集中で大事なことを積み重ねていくには、このように感情的なコンフリクトを避ける姿勢が大事だと感じます。非生産的ないざこざに時間やエネルギーを使うのではなく、価値ある仕事に淡々と一点集中するんです。
大事なのは「選択して、実行する」ということ
『一点集中術』は、そうやってプライオリティを守りながら集中力を保ち続ける方法を書いています。意思決定と実行について、示唆的な一節を引用させてください。
それは、本を読む気力など残っていないのに、しぶしぶ読み聞かせをした結果、いらだって負け犬のような気分になることだ――。
つまり、意思決定のポイントは2つだ。
〈選択する。そしてブレずに実行する〉
次回はべつの行動を選んでもかまわない。頑固になる必要はない。
ただ、ある行動をとると決めたら、真剣にその行動を続けよう。――『一点集中術』
この引用が伝えているのは、日々の仕事や人生において、自分の行動を「自分で選ぶ」ことの大切さです。そして、一度選んだ行動については、外から何を言われても、ブレずにやり切ること。それが、外部のノイズから自分を守り、後悔やフラストレーションを避けるための土台になります。
感情的な対立に引き込まれそうになったときも、「ありがとうございます」と静かに受けて、選択したタスクに淡々と集中を注ぎ続ける。そうした内面の強い意志と姿勢こそが、『一点集中術』で描かれている賢い振る舞い方なんです。
(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』の翻訳者インタビューです)









