「構想力・イノベーション講座」(運営Aoba-BBT)の人気講師で、シンガポールを拠点に活躍する戦略コンサルタント坂田幸樹氏の最新刊『戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』(ダイヤモンド社)は、新規事業の立案や自社の課題解決に役立つ戦略の立て方をわかりやすく解説する入門書。企業とユーザーが共同で価値を生み出していく「場づくり」が重視される現在、どうすれば価値ある戦略をつくることができるのか? 本連載では、同書の内容をベースに坂田氏の書き下ろしの記事をお届けする。
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なぜ、多くの戦略は実行段階でつまずくのか?
あなたの会社にも、口では壮大な構想を語りながら、実行が伴わない人はいないでしょうか。
新規事業をつくるべきだ、イノベーションを起こすべきだと主張しながら、実際の行動が追いつかない。
あるいは、提案書だけは精緻に作り込まれているものの、現場は一向に動き出さない。
こうした「口だけ」の状況は、多くの組織で見られます。
その背景には、ビジネスの前提が大きく変わっているにもかかわらず、その変化に気づけていないという問題があります。
かつてのモノづくりの時代は、素材を仕入れて加工し、付加価値を高めることで事業が成立していました。その後、サービスや体験を通じて価値を拡張するコトづくりへと発展し、現在ではデジタル技術の浸透によって、複数の主体をつなぎ価値を共創する場づくりへと重心が移っています。
にもかかわらず、過去の前提で戦略を語る人は、実行の局面で必ずつまずきます。
場づくりに必要な関係性や仕組みを整えないまま理想だけを掲げても、現場が動く土台がないからです。
鍵となるのは、ヨコの関係を築けるかどうか
モノづくりやコトづくりでは、社内の縦の関係性や自社系列のネットワークだけで完結する場面が多く、上司の承認や社内調整が中心でした。
しかし、場づくりでは事情がまったく異なります。
イノベーションは一社だけでは生まれにくく、他者とつながり、共創することが不可欠になっているからです。
スタートアップとの協業、大学や研究機関との共創、地域との連携など、外部の知やリソースを組み合わせることで新たな価値が立ち上がります。場合によっては競合企業と協調し、新しい市場をともに生み出すことさえあります。
こうした外部とのつながりによって、事業は徐々に広がりや深みを帯びていきます。
つまり、一社で価値を完結させる発想ではなく、複数の主体をつなぎ、協働の場を形づくる視点が求められます。
戦略を実行できる人とは、仕組みを整える前に、その土台となるヨコの関係性をつくれる人だといえます。
一方で、口だけの人はこのヨコの発想を持てません。自社の都合を優先し、部門の壁を越えられず、人間関係の摩擦を避けたがる傾向があります。
その姿勢のままでは周囲を巻き込むことができず、他社を追い越そうと掲げた壮大な戦略も、やがて机上の空論となってしまいます。
関係性をデザインできる人が、戦略を動かせる
場づくりの時代において、戦略の成否を分けるのは、個々の活動の巧拙ではなく、ヨコの関係性をどのように設計するかです。
戦略を実行できる人は、戦略の背景にある
・Perspective(視点:なぜこの戦略が必要なのか)
・Value(価値:誰にどんな価値を生むのか)
・System(仕組み:誰と、どのように実行するのか)
の3つを丁寧にとらえ、周囲を巻き込みながら形にしていきます。
従来のように既存のものを壊して新しい価値をつくる「創造的破壊」ではなく、今あるものを有機的につなぎ合わせることで新しい可能性を生み出す「創造的統合」の姿勢が、これからの場づくり時代の戦略を構想するうえでは欠かせません。
多様な主体が力を発揮できる場を設計し、その力を束ねることができる人こそ、戦略を現実の成果へと近づける人だといえるでしょう。
『戦略のデザイン』では、場づくりの時代に戦略を動かす方法について、背景となる思考やフレームワークを体系的に整理しています。
IGPIグループ共同経営者、IGPIシンガポール取締役CEO、JBIC IG Partners取締役。早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)。ITストラテジスト。
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト・アンド・ヤング(現フォーティエンスコンサルティング)に入社。日本コカ・コーラを経て、創業期のリヴァンプ入社。アパレル企業、ファストフードチェーン、システム会社などへのハンズオン支援(事業計画立案・実行、M&A、資金調達など)に従事。
その後、支援先のシステム会社にリヴァンプから転籍して代表取締役に就任。
退任後、経営共創基盤(IGPI)に入社。2013年にIGPIシンガポールを立ち上げるためシンガポールに拠点を移す。現在は3拠点、8国籍のチームで日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。
単著に『戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』『超速で成果を出す アジャイル仕事術』、共著に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(共にダイヤモンド社)がある。




