「構想力・イノベーション講座」(運営Aoba-BBT)の人気講師で、シンガポールを拠点に活躍する戦略コンサルタント坂田幸樹氏の最新刊『戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』(ダイヤモンド社)は、新規事業の立案や自社の課題解決に役立つ戦略の立て方をわかりやすく解説する入門書。企業とユーザーが共同で価値を生み出していく「場づくり」が重視される現在、どうすれば価値ある戦略をつくることができるのか? 本連載では、同書の内容をベースに坂田氏の書き下ろしの記事をお届けする。
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トラブルが続く現場には、
ある共通点がある
あなたの組織では、トラブルが起きたときにどのように対処しているでしょうか。
担当者を呼び出し、原因を問い詰め、「次から気をつけるように」と叱責して終わる。
もし、そんな対応が常態化しているのであれば、注意が必要です。
失敗は、どれだけ優秀な組織でも必ず起きるものです。問題は、失敗そのものではなく、起きた失敗をどう扱うかにあります。
戦犯探しで終わる組織は、一見すると責任追及の姿勢が強く、規律が保たれているように見えますが、実際には、現場に萎縮が生まれ、学習が起こらず、やがて大きな事故につながる土壌になってしまいます。
では、こうした萎縮してしまう現場と「トラブルが起きない現場」では、何が違うのでしょうか。
その答えは、失敗の分類と扱い方にあります。
失敗は「発生頻度 × インパクト」で整理する
失敗は「発生頻度」と「インパクト」の2軸で分類すると、適切な対応が見えてきます。
まず、「発生頻度が高く、インパクトが小さい失敗」というのは、日常的に繰り返されるいわゆる“ヒューマンエラー”で、この領域の失敗は「気をつけよう」では防げません。
繰り返すほど現場の負荷が高まり、抜け漏れが起きやすくなるため、チェックリスト化・標準化・自動化など、仕組み化によって構造的に再発を防ぐべきです。
「発生頻度が高く、インパクトが大きい失敗」は、組織の戦略そのものを本質的に問い直す必要がある、深刻なシグナルです。
たとえば、幾度となく繰り返される失注に対し、「気合と根性で売ってこい」ではなく、「製品が市場に合っていないのか」「顧客設定に誤りがあるのか」など、構造的な議論および戦略の改善につなげることが重要です。
「発生頻度が低く、インパクトが大きい失敗」には、想定外の事故や重大なトラブルが該当します。
発生頻度が低いがために“誰のせいか”という議論に流れがちですが、本質的な原因究明をしつつ、組織能力の強化のために活用する姿勢が大切です。
「発生頻度が低く、インパクトが小さい失敗」については、極端にいえば無視してよい失敗です。
必要以上に騒ぎ立てると、かえって現場の疲弊を招きます。
このように失敗を整理することで、次に取るべき一手の優先順位を判断できるようになります。
失敗を定義して共有する組織は、
事故を未然に防げる
「トラブルが起きない現場」は、失敗がゼロなのではなく、失敗を定義し、組織として学べる仕組みを持っています。
具体的には、次のような共通点があります。
・「許容する失敗」と「許容しない失敗」の線引きを持っている
・失敗を分類し、対応方針を明確にしている
・個人を責めるのではなく、再発を防ぐ構造を整える
・現場で起きた失敗を共有し、組織全体の知見として蓄積する
こうした姿勢こそが、トラブルを減らし、組織の学ぶ力を育てます。
失敗を恐れて隠す組織ではなく、失敗を定義し、学びを仕組みに変える組織へ。
その一歩が、重大な事故を防ぎ、持続的な競争力を生み出します。
『戦略のデザイン』では、この「失敗から学ぶ仕組み」の詳細を、実例とともに整理しています。
IGPIグループ共同経営者、IGPIシンガポール取締役CEO、JBIC IG Partners取締役。早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)。ITストラテジスト。
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト・アンド・ヤング(現フォーティエンスコンサルティング)に入社。日本コカ・コーラを経て、創業期のリヴァンプ入社。アパレル企業、ファストフードチェーン、システム会社などへのハンズオン支援(事業計画立案・実行、M&A、資金調達など)に従事。
その後、支援先のシステム会社にリヴァンプから転籍して代表取締役に就任。
退任後、経営共創基盤(IGPI)に入社。2013年にIGPIシンガポールを立ち上げるためシンガポールに拠点を移す。現在は3拠点、8国籍のチームで日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。
単著に『戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』『超速で成果を出す アジャイル仕事術』、共著に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(共にダイヤモンド社)がある。




