製薬業界の誰もが望まぬ“ファーストペンギン”は「久光製薬」?高市改革のシンボルに急浮上の「OTC類似薬保険給付外し」で自らを手当てする羽目に!?Photo by Masataka Tsuchimoto
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 今から80年前に日米両国が激戦を繰り広げた太平洋の孤島・硫黄島。近年はその戦いが映画やドラマに取り上げられたことから戦史に興味のない若い層にもある程度知られるようになった。当時の大日本帝国が国体保持のための最終ラインとした絶対国防圏は44年夏の段階で破られており、硫黄島の戦いは日本側にとっては米軍の沖縄攻略と、続く本土上陸を少しでも遅らせようとする「捨て石」戦略に基づくものであったことが今日では定説となっている。

 そんな国民や軍隊を「軽視」した大日本帝国へのリスペクトを隠さない高市早苗内閣が、10月21日に発足した。選挙の洗礼を受けていない政権の常として閣内の面々には浮足気味の言動が目立ち、当の高市首相も「世界の真ん中で咲き誇る」などと、平成期に大ヒットした「SMAP」の曲を想起させるポエムを繰り返すのが精一杯のように映る。

 そうしたなかで例外的に、現実味を帯びて改革が進んでいきそうなのが、業界関係者が固唾を飲んで見つめる「OTC類似薬の保険外し」であることは論を俟たない。この政策課題自体は15年近く前から毎年、初夏頃までに浮上しては12月の予算編成を待たずに消えていく昆虫のような流転を見せていた。ところが今年は例外的に生き延びて、初めて26年度予算に痕跡を残せそうな機運となっている。

 来春を無事に迎えられればとうとう爬虫類へと格上げか、といった冗談はさておき、やはり、「庶民の味方」を標榜してきた公明党が自民党との連立を解消し、代わりに、ポピュリズム(大衆迎合主義)を運動原理とする日本維新の会が閣外協力した変化が大きかった。維新の名物議員が以前から推してきた「OTC類似薬の保険外し」が俄かに政局のテーマとして浮上したのみならず、今後の流れによっては高市改革のシンボルとして祭り上げられる可能性すら高まってきている。

 実際、両党の間では既報の通り、今年度中に「具体的な制度設計」を行うことで一致しており、向こう数ヵ月の間に政権の崩壊や未曽有の大災害、予期せぬ騒乱等が発生しない限り、保険外しへ向かう流れは変わらないと見られる。従って、課題としてはいつ、何のOTC類似薬を俎上に載せるかというフレームづくりが焦点となる。政治にやる気があって枠組みさえ決まれば、後は優秀な官僚が粛々と細部を組み上げていくだけの作業である。これをOTC類似薬のメーカーから眺めれば、延び延びになっていた余命宣告がいよいよ告げられたということになろう。