日本で最もレベルの高い野球技術を持ち、実戦を通して高度な理論も身につけているのは言うまでもなくプロ野球選手だ。が、そのプロ野球OBは学生野球の指導をしてはいけない、どうしても指導したければ長期間教職に就き「プロの色」を消してからだ、というヘンテコなルールが長年まかり通ってきたのが日本球界である。

 この規定がついに無くなることになった。プロ側が行う研修(1日・7コマ)とアマ側行う研修(2日・10コマ)と適性検査を受ければ、高校・大学の指導者になる資格を回復できることになったのだ。プロ野球OBの学生野球資格回復に難色を示してきたのはアマ側だが、日本学生野球協会の理事会で、この制度を全会一致で承認。7月1日から施行されることになった。

意外と多いプロ野球OBのアマ指導者志望
それが許されなくなったのはなぜか

 野球の指導者、それも監督は野球経験者にとって憧れの職業だ。プロ野球の監督を除けば、さほど待遇が良いわけでもない。だが、自分の理論や指導法で選手を鍛え、試合になれば勝利を目指してオーダーを組み、投手交代、バント・エンドランなど作戦選択もすべて決断する。こうした仕事をして食って行けたら楽しそうだ、と思うわけである。

 なかでも人気があるのが高校野球の監督だ。やんちゃ盛りのハイティーンを相手にするのは苦労もありそうだが、若く伸びしろがある分、指導力次第で成長が望めるし、厳しい地方予選を勝ち抜けばその先には甲子園という晴れ舞台がある。こうした目標が持てるのは大きな喜びであり、現役を引退した後は高校野球の監督になりたいという人は結構いる。

 ところが、プロ野球OBには長い間、それが許されなかった。それはなぜか。

 1961年に起こったある事件がきっかけで、プロとアマが断絶したからだ。それまでは徳島・池田高校を率いて春の甲子園2回優勝、夏は1回の優勝に導いた蔦文也監督のようにプロ野球OBが高校の指導をするケースは珍しくなかった。しかし、この年からはプロ野球OBが学生野球の指導をすることが禁止されてしまったのである。