基礎控除の引き上げは
所得が高いほど有利
昨年の今頃、少数与党となった自民党は、議席を増やした国民民主党が公約としていた「年収の壁引き上げ」について協議をしていた。結果、25年度の税制改正で基礎控除は、48万円から58万円に引き上げられたのだ(一定収入以下は上乗せ額あり)。
そんな中、昨年の議論の中で浮上したのが、「基礎控除を物価に連動させて動かす案」である。
米国をはじめ主要国では、インフレ率に連動して所得税の課税最低限の年収基準が決まるので、日本でも導入すべきではないかという声があがっていた。
基礎控除が引き上がると、どの程度減税になるのか。
基礎控除は、所得から差し引ける「所得控除」なので、同じ金額が引き上がれば、所得税率の高い人ほど、減税額が大きくなる。
基礎控除が一律10万円引き上げになった場合の所得税の軽減効果を具体的に見てみよう。
年収200万円:3000円
年収300万~400万円:5100円
年収500万~600万円:1万200円
年収700万~1100万円:2万400円
年収1200万~1300万円:2万3500円
年収1400万~1500万円:3万3700円
(年収は給与収入。税務上の扶養家族なしのケースで25年の税制をもとに試算。所得税の減税額)
所得税は累進課税で、税率は5%、10%、20%、23%、33%、40%、45%と課税所得が上がるほど高くなる。つまり、基礎控除の引き上げは、所得が高い人ほど有利になる。
所得が高い人ほど有利になるとはいっても、20年度の税制改正で給与収入2695万円超(合計所得2500万円超)になると、基礎控除はゼロとなった。がんばって高い収入を得たとしても、自分が生きていくための必要経費となる基礎控除がゼロになるとは、夢のない話だ。
この数年物価は上がり続け、落ち着く様子は見られない。インフレ率連動の基礎控除の見直しは、実現するのか。来年度の税制改正の協議は12月が山場となるので、今後の展開をウオッチしていきたい。
「給付付き税額控除」は
どの所得帯も同じ恩恵が受けられる
続いて、高市総理が政策の一つに掲げる「給付付き税額控除」とはどんなものか。
「給付付き税額控除」とは、所得税の減税と現金給付を組み合わせた制度だ。納めている所得税が少なく、減税を受けられない人には差額分を給付金として支給するというもの。
例えば、10万円の減税を実施する場合、所得税の納税額が10万円超の人は10万円の減税を受けられる。納税額が5万円の人は、5万円の減税と5万円の現金給付の組み合わせで「10万円」の恩恵を受けることができる。







