「集中の仕方を知らない人」は、せっかくの努力を無駄にしているかもしれない。
やる気があるのに集中できない……。その原因は、実は「脳の興奮レベル」にあった。『ULTRALEARNING 超・自習法』は、短期間でスキルを習得するための科学的な自習メソッドを解き明かした一冊だ。本書にある「興奮レベルの最適化」という方法を知れば、仕事も学習も驚くほど効率が上がるだろう。
本連載では、ウォール・ストリート・ジャーナル・ベストセラーにもなった本書の「学習メソッド」を紹介していく。(構成:ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)
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集中できないのは「興奮レベル」が原因だった
集中とは単に長時間机に向かうことではなく、「意識の向け方」そのものである。
本書では、集中力の質を決定づける要素として「興奮レベル」と「作業の複雑さ」という2軸を挙げている。
興奮とは心拍数や覚醒度が高まり、頭が冴えている状態を指す。
この興奮レベルが高いと、狭い範囲での集中が鋭くなる一方で、過度に高まると逆に集中を乱す。
過度に興奮すると、集中力が落ち始める。気が散りやすくなり、一定の場所に集中を維持することが難しくなるのだ。(『ULTRALEARNING 超・自習法』より)
逆に、複雑な問題を考えるときには、心拍数を上げすぎないほうがいい。
静かな部屋や落ち着いた音楽が複雑な問題を考えるときには適していて、それは、思考を広げるためには緩やかな集中が必要だからだ。
「静かな部屋」か「にぎやかなカフェ」か、選ぶ基準
ある実験では、睡眠不足の被験者と十分に休息を取った被験者に課題を与えたところ、周囲の騒音が睡眠不足の被験者の成績をむしろ上げたという結果が出た。
刺激が不足していた被験者にはノイズが覚醒を促す一方、すでに覚醒していた被験者には過剰な刺激となったのだ。
理想的な集中状態を維持するためには、興奮のレベルの最適化を検討する必要がある(『ULTRALEARNING 超・自習法』より)
本書の理論を実践に応用すると、自分の「集中スイートスポット」を探ることが重要になるだろう。
静けさを好む人もいれば、カフェのざわめきが心地よい人もいる。自分に適した環境を探してみるのがいいだろう。
多くの人にとっては、“単純作業には「騒がしい環境」を、創造的作業には「静かな環境」を選ぶ”ことで、生産性を上げることができるはずだ。
集中力は「鍛えられる」スキルである
著者は、集中力は限られた人の才能ではなく、「練習によって向上できるスキル」だと述べる。
短時間でも集中する習慣を積み重ねることで、徐々に脳が「集中モード」に入りやすくなるという。
気を散らしたいという衝動は、それに抵抗するたびに弱まる。(『ULTRALEARNING 超・自習法』より)
たとえば、スマホ通知をオフにして5分だけ集中してみるだけでも、脳に「集中できる感覚」を学習させる効果があるはずだ。
集中とは、忍耐の結果ではなく訓練の成果なのだ。
ちなみに、近年「ポモドーロ・テクニック」などの短時間集中法が話題になっているが、これは本書の思想と通じる部分がある。
要は、「時間を区切り、興奮レベルを意図的にコントロールする」ことが、情報過多社会という環境で勉強をする鍵なのだ。





