Photo by Yasuo Katatae
AV・家電機器メーカーの船井電機が2024年10月24日に破産する直前、同社の親会社株式はEFI株式ファンドへと売却され、再建の道を歩むはずだった。ところが株式は当初の計画通りに譲渡されることはなく、さらに船井電機の経営権を巡り、創業家に近い古参の幹部らと新たな取締役候補者との間で争いが勃発。会社の再建は進まず、混乱する中で破産が申請されることになった。今回、EFI株式ファンド代表の福井啓介氏が、当時の状況についてインタビューに答えた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)
船井電機立て直しに魅力感じ
怪しさを感じながら買収へ
――船井電機の親会社株式は、福井さんが代表を務めるEFI株式ファンドが、経営コンサルタントの古寺誠一朗氏と共同で買収する計画でした。ところが計画通りには進まず、株式は古寺誠一朗氏の弟である古寺真浄氏がオーナーを務める利回市場が1円で買収します。まず、福井氏がこの買収に関わるきっかけを教えてください。
私は2021年から23年にかけて、福島県の医療法人社団の理事をしていました。古寺氏はその理事長を介して紹介された知人の一人でした。船井電機買収については、古寺誠一朗氏から24年8月に相談されたことがきっかけです。
私はビジネススクールにも通い、経営コンサルタントとして活動していましたので、事業の立て直しは得意分野です。ただ私は当初から、古寺氏のことをあまり信用していませんでした。
(古寺氏の主張はこちらの記事を参照:「船井電機“準自己破産”から1年、内紛・登記妨害・告訴合戦…経営権を取得した古寺兄弟に聞く「カオスの内幕」)
――なぜ信用していなかったのですか。
私は大学院を卒業後、10年以上東芝に勤めていました。船井電機のことは、もちろん知っていました。その企業がわずか15億円程度で買収できるなんて、ありえないことです。この話には、何かからくりがあるのではないかと感じていました。
ただ、そう思いながらも、この話に魅力を感じていたのだと思います。私の甘かったところです。
――怪しいと思いながらも、結局福井さんは古寺氏と共同で船井電機の買収へと乗り出します。なぜでしょうか。
船井電機の買収や再建の計画から、外された形になった福井氏。さらに船井電機では、創業家に近い古参の幹部と古寺兄弟らが経営権を奪い合う泥仕合が繰り広げられた。福井氏は一連のM&Aを通じて、古寺兄弟にだまされたと主張している。次ページでさらに詳しい経緯について、話を聞いた。







