新刊『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「偏差値や受験難易度だけで語られがちだった子育てに新しい視点を取り入れてほしい」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、難関大学の学生に大学が求めることについて解説します。
Photo: Adobe Stock
「この大学に入りたい」だけでは足りない
私たちはこれまで、実際に大学に合格した受験生の志望理由書を1000件以上集め、どんな人が大学に評価されているのかを分析してきました。その中で、明確に見えてきた傾向があります。
それは、合格する受験生は「自分が大学に与えられる価値」を語っているということです。
多くの受験生が志望理由書に書くのは、「この大学で◯◯を学びたい」「この分野に興味がある」といった、“自分が何を得たいか”という視点です。
もちろん、それは大切なことです。
しかし、大学側から見るとそれだけでは一方通行の志望理由に見えてしまいます。総合型選抜では、大学は「その学生が入ることで学びの場がどう豊かになるか」「大学にどんな影響を与えてくれるか」を重視しています。言い換えれば、「あなたを取ることは、大学にとってどんなメリットがあるのか」を見たいのです。
ICU(国際基督教大学)では、こう聞かれた
この傾向を象徴するのが、数年前にICU(国際基督教大学)の出願書類で出された志望理由書の質問の1つです。そこには、こう書かれていました。
「あなたのことを本学が取るメリットは何だと思いますか?」
一見、挑戦的な問いに見えます。しかしこれは、総合型選抜という入試の本質を突いている質問でもあります。
大学は、学生を“お客様”としてではなく、“共に学びをつくるパートナー”として迎えたいのです。だからこそ、「自分が入ることで大学の何が変わるか」を語れる学生を求めています。
この問いに対して、「ICUの多様性のある環境の中で、自分の国際ボランティアの経験を共有し、海外志向の学生と議論を深めたい」「自分が取り組んできたジェンダー平等の活動を、リベラルアーツの学びの中でさらに発展させたい」といった“大学と自分の関係性”を具体的に語れた学生は、やはり合格していました。
「自分を取らないのは大学の損失です」と言えるか
難関大学であればあるほど、学生に求められるのは「受け身の姿勢」ではなく、「貢献の姿勢」です。私たちが分析した志望理由書の中でも、合格した学生の多くは、「自分がこの大学で学ぶことで、こういう形で貢献できる」という“大学側へのメリット”をしっかり書いています。
中には、次のような書き方をしていた学生もいました。
「私は◯◯の研究を通じて、高校で続けてきた△△の活動をさらに体系的に広げることができます。その成果を在学生や地域社会と共有することで、◯◯大学の社会連携プロジェクトにも貢献できると考えています。」
こうした文章には、「自分を取ることが大学にとってプラスである」という確信が感じられます。つまり、合格できる学生は、大学に「私はあなたに必要な人間です」と言える人なのです。
「評価される立場」から「提案する立場」へ
この発想は、多くの受験生にとって新鮮かもしれません。なぜなら、ほとんどの生徒が「自分は評価される側」「選ばれる側」と考えているからです。
しかし、総合型選抜で評価されるのは、「自分が何を提供できるか」を語れる人です。大学は、主体的に学びをデザインできる人材を求めています。たとえば、「大学に入って何を学びたいか」ではなく、「自分の経験を大学の学びにどう生かすか」を語れること。それが、総合型選抜における「プレゼンテーションの本質」なのだと考えられます。
(この記事は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』を元に作成したオリジナル記事です)




