「遊んでばかりいないで勉強しなさい」つい子どもに言ってしまいがちですよね。
新刊『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「偏差値や受験難易度だけで語られがちだった子育てに新しい視点を取り入れてほしい」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、推薦入試の現状をもとに、子どもの才能を伸ばす親がやっていることについて解説します。

子ども 育て方Photo: Adobe Stock

子どもの才能を伸ばす親がやっていること

「総合型選抜って、どんな子が受かりやすいんですか?」

この質問を、私は本当によく受けます。

もちろん、大学や学部によって求める学生像は違います。探究活動に力を入れている子、ボランティアや課外活動に熱心な子、論理的に自分の考えを伝えられる子……。さまざまなタイプの合格者がいます。

けれど、数多くの事例を見てきて私が強く感じるのは、「親が子どもの興味関心を邪魔しなかった家庭の子が受かっている」ということです。

興味を“禁止”しなかった親が、子どもの可能性を広げていた

私はこれまで多くの受験生の話を聞いてきましたが、印象的だったのが九州大学文学部の総合型選抜に合格したある生徒のケースです。

彼は高校時代、ボディービルに打ち込んでいました。一見、受験や学問とは関係がなさそうに思えます。しかし、彼が志望理由書に書いたのは、「なぜスポーツ界でドーピングが問題になるのか」「“努力”とは何か」という哲学的な問いでした。

彼は自分が取り組んできたボディービルを通じて、「倫理とは何か」というテーマに関心を持つようになり、「倫理学を学びたい」と九州大学の文学部を志望したのです。

結果、彼は見事に合格しました。

ここで重要なのは、彼の両親がボディービルを“止めなかった”ということです。

「そんな筋トレばっかりしてないで勉強しなさい」と言われていたら、きっと彼はドーピング問題を考える機会も、倫理学という道に出会うこともなかったでしょう。

「野球観戦ばかりしてないで勉強しなさい」と言われてもやめなかった少年

もう一つ、法政大学経済学部に総合型で合格した男の子の話を紹介します。彼は高校時代、野球部に所属していました。しかしケガでプレーを続けることができず、野球選手になる夢は断たれました。

それでも彼は「野球が好き」という気持ちを絶対に手放さなかったのです。テレビで試合を見続け、データを集め、経済的な視点から野球ビジネスを研究し始めました。

そして彼はこう語ったのです。
「俺は日本の野球選手の給料を、アメリカの選手よりも高くしたい」

この言葉をきっかけに、彼はスポーツビジネスやスポーツ経済学を学ぶ決意を固め、法政大学経済学部の総合型選抜で合格を勝ち取りました。

彼のケースでも、鍵になったのはやはり“親の姿勢”でした。もし「野球観戦なんてやめなさい」と止められていたら、彼はその興味を経済学に結びつけることもなかったはずです。

「興味」は、子どもの最大のエネルギー源

総合型選抜では、「何をやってきたか」だけでなく、「それを通じて何を考え、どう学びにつなげたか」が問われます。つまり、“行動の背景にある思考”が見られているのです。

子どもが何かに熱中しているとき、その背後には必ず“問い”があります。
「なぜうまくいかないんだろう」
「どうすればもっと良くなるんだろう」
「この仕組みはどうなっているんだろう」

こうした小さな疑問が、やがて研究テーマや志望理由書の核になります

だからこそ、親がやるべきことは「興味を止めること」ではなく、「その興味を観察すること」です。

「なんでそんなにそれが好きなの?」「どうしてそう思うの?」と問いかけてあげるだけで、子どもは自分の関心を言葉にし、自覚するようになります。それが、総合型で最も評価される“自分の軸”につながっていくのです。

親が「邪魔しない」ことが、最強の支援

もちろん、親としては心配になる気持ちもわかります。テストの点数が下がれば不安になりますし、「そんなことをやっていて将来大丈夫なの?」と思うこともあるでしょう。けれど、子どもの興味は、親が想像する以上に未来へのヒントになっています。

今日の「ボディービル」や「野球観戦」が、明日の「倫理学」や「経済学」に変わるかもしれないのです。
その変化のプロセスを信じて見守れるかどうか――それが、総合型選抜での成功を左右する大きな要素だと思います。

実際に多くの合格者を見ていると、「親が勉強の方向を決めた家庭」よりも、「親が子どもの好奇心を応援した家庭」の方が、圧倒的に成長しています。子どもの中に“問い”を生むのは、押しつけではなく、自由に探究できる環境なのではないでしょうか。

(この記事は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』を元に作成したオリジナル記事です)