新刊『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「偏差値や受験難易度だけで語られがちだった子育てに新しい視点を取り入れてほしい」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、総合型選抜の現場から、将来の大学受験につながる「子どもの興味」について解説します。

名門校 学歴Photo: Adobe Stock

総合型選抜は、“マッチング”の入試

総合型選抜は、よく「マッチングの入試」と言われます。これはつまり、偏差値という共通の物差しで測る入試ではないということです。

一般入試では、全国の受験生が同じ問題を解き、点数という“共通言語”で競います。偏差値が60なら偏差値60の大学群に挑戦できる、というように、数値で判断できる仕組みになっています。

一方で総合型選抜は、「あなたがどれくらいその大学に合っているか」という“相性”が最も重視されます。大学が掲げる理念や教育方針に、自分の興味・関心、将来の目標がどれだけ重なるか――。そこが合えば、偏差値では届かない大学でも合格できることがあるのです。

「どんな人に来てほしいか」を大学が明示している

多くの大学では、総合型選抜の募集要項の中に「アドミッション・ポリシー(求める学生像)」が掲載されています。それをよく読むと、「こういう人に来てほしい」という大学の“ラブレター”のような言葉が並んでいます。

たとえば、法政大学文学部地理学科の総合型選抜(自己推薦入学試験)では、求める人材像をこう定義しています。
「地図を眺めていると時間を忘れてしまう人、三度のメシより地理が大好きだという人」

一見ユーモラスな表現ですが、これほど明確に「好きでたまらない人」を求めている大学は珍しいかもしれません。この言葉の裏には、「受験テクニックではなく、本当に地理を探究したい人を迎えたい」という大学側のメッセージがあります。

つまり、“地理愛”そのものが評価対象になるのです。

これまでの一般入試では、「地図が好き」と言っても、それが地理のテストで少し点数に反映される程度の評価にしかなりませんでした。

しかし総合型選抜では、その“好き”がそのまま評価される。「地図を見ているだけで楽しい」「世界の成り立ちを知りたい」といった気持ちが、そのまま志望理由の中心になっていくのです。

「こんな興味でもいいの?」が扉を開く

多くの受験生が、「自分の興味関心なんて大したことがない」「こんなことを大学で話してもいいのかな」と感じています。しかし、実際には“くだらないと思っていたこと”が、その人の魅力になるのが総合型選抜です。

「知育菓子の『ねるねるねるね』が大好きで、この魅力を海外に発信したい」
「考古学が好きで、とにかくピラミッドに並々ならぬ情熱を持っている」

こうした小さな興味も、掘り下げ方によっては立派な興味関心・研究テーマになります。

ちなみに私自身、総合型選抜で早稲田大学文化構想学部に合格していますが、この時には「JCULP(Japan Culture and Language Program)」という入試方式を使いました。これは、日本文化を海外の視点から学び、世界にその魅力を発信することを目的にしたものです。

この入試の特徴は、「日本文化をどう捉え、どう世界に伝えたいか」をテーマとして問われる点にあるわけですが、私の場合は、「ミステリー小説の魅力を世界に発信する」というテーマを選びました。

「なぜ日本はこれほどミステリー小説が素晴らしいのか」「ハイコンテクストなコミュニケーションのある日本だからこそ素晴らしいミステリー小説が生まれる土壌がある」といったことをプレゼンして、合格をいただきました。

地図でも、ミステリー小説でも、ピラミッドでも、ねるねるねるねでも、なんでも「その人独自の興味関心」として受け取ってもらえます。

でも、そのためにはしっかりと大学を知らなければなりません。「こんな興味関心があっても意味ないよな」ではなく、「こういうことを調べられる大学ってあるのかな」というように考えながら大学を探してみてください。そうすれば、開ける扉があるかもしれないのです。

拙著『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』では、今回登場した“小さな興味”を総合型選抜で活かして合格していった高校生たちの実際の志望理由書をもとに、彼らが12歳の頃からどのように「好き」を伸ばしていったのかを詳しく紹介しています。

中学生はもちろん、小学生のうちからでも「その子らしい興味」は必ず芽生えています。受験はまだ先だと思っている方こそ、ぜひ一度目を通してみてください。将来につながるヒントがきっと見つかるはずです。

(この記事は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』を元に作成したオリジナル記事です)