同じ時間を使っているのに、大きな成果を上げる人がいると、頑張っているのに成果が伸びない人もいる。その違いはどこから生まれるのか。18言語で話題の世界的ベストセラー『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』から、訳者の栗木さつき氏にヒントをうかがった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

「見ていられないほど仕事ができない人」の残念な働き方・ワースト1Photo: Adobe Stock

いつも仕事が遅くなってしまう原因

――『一点集中術』の観点から見て「仕事ができない人」の共通点とは何でしょうか。

栗木さつき氏(以下、栗木):本書の観点から言えば、仕事ができない人とは、つねに「マルチタスク」で仕事を動かしている人のことです。

 そういう人は、仕事の量が多くてスピードを上げたいからマルチタスクをしているわけですよね。でも実際には、そのせいで未完了の中途半端なタスクが積み上がっていってしまう。著者は、これが多くの人が仕事が遅くなったりミスをしてしまったりする原因だと指摘しています。

――たしかに、忙しいときはつい同時進行でバタバタしてしまいがちです。

栗木:わかります。でも、脳の仕組みからいえば、人は複数の作業に集中することはできません。著者はこう説明しています。

 マルチタスクは状況を改善するどころか、むしろ問題を悪化させる。
 そもそも人間の脳は、一度に複数のことに注意を向けることができないのだ。
 マルチタスクは情報の流れを遮断し、短期記憶へと分断する。そして短期記憶に取り込まれなかったデータは、長期記憶として保存されずに、記憶から抜け落ちていく。
 だから、マルチタスクを試みると能率が落ちるのだ。――『一点集中術』より

 本書によると、人はマルチタスクをしているつもりでも、脳内では「A→B→A→B」と高速で注意を切り替えているだけなんです。この切り替えに大きな認知コストがかかるので、結果として作業時間は伸び、ミスも増える。だから、忙しいときほど、むしろ1つずつ片づけたほうがいいんです。

 マルチタスクは、忙しい人ほど陥りやすい「罠」です。本人は効率を上げているつもりでも、脳はその負荷に耐えられず、むしろ効率が下がっていく。これが、主観的には頑張っているわりに、なかなか成果ができない人によく見られる働き方なんです。

――本人としては努力して必死なのに成果が上がらない人は見るに忍びないものがあります。

「仕事ができる人」の共通点は?

――「仕事ができる人」にはどういう共通点がありますか。

栗木:著者は、「ノー」を言えることが大事だと言っています。仕事ができる人は「何をしないか」をはっきり決められるということです。

 やるべきことが多いときほど、優先順位を考え、最優先のタスクから集中してこなしていく。これが「一点集中術」の核心です。

 また、仕事ができる人は、集中するための「環境」を意識的につくっています。本書でも、スマホに煩わされないようにしたり、同僚に邪魔されないようにしたりといったさまざまな工夫が紹介されています。毎日、環境をコントロールして、一点集中できる時間を確保することが、成果を上げる秘訣なんです。

(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』の翻訳者インタビューです)