中国経済成長のカギは「近隣窮乏化」モデルPhoto:VCG/gettyimages

 突然だが、クイズだ。今年、自国以外の世界の経済成長により大きく貢献しているのは、中国と米国のどちらだろうか。

 答えは米国で、両国の間には大きな差がある。米国は関税をかけているにもかかわらず、輸入は今年これまでに前年同期比で10%増加している。一方、中国は保護主義に反対しているが、同国の輸入はドル建てで3%減少している。

 米国の数字は関税引き上げを見越した取引を反映した異常値かもしれないが、中国の数字は異常値ではない。過去5年間で、中国の輸出量が急増したのに対し、輸入は横ばいで推移している。中国は工業製品の世界市場でシェアを大幅に拡大している。このことは厄介な真実を明らかにしている。中国は他のすべての国・地域を犠牲にして、「近隣窮乏化」成長モデルを追求しているということだ。

 ゴールドマン・サックスのエコノミスト陣がまとめた最近のリポートは、この点を明確に説明している。それによると、かつては中国の生産が1%増えると、輸入が増えるため、他国の生産が0.2%押し上げられた。

 ゴールドマンは新たな予測で、この関係がマイナスに転じたと結論付けた。中国の成長を主導しているのは「製造業の競争力を一段と高め、輸出を増やすという指導部の決意と能力」だという。

 より安価な中国製品が購買力を高める限りにおいては、これは他国にとってプラスだ。しかし、その恩恵に比べれば、各国の製造業が中国との競争によって受ける打撃の方が大きい。結論として、今後数年間に中国の経済成長は年率約0.6ポイント加速するが、それによって他国の成長率が年0.1ポイント押し下げられるとゴールドマンは予想している。

 それでも中国の成長は、同国の国民にとって良いことであり、中国の輸出産業向けに原材料を輸出する一部の国にとっても良いことだ。しかし、ゴールドマンはそれが今後、欧州や東アジアの他の工業国やメキシコにとって、ますます大きな障害になると予想している。