中国人の団体旅行客でにぎわう成田空港中国人の団体旅行客でにぎわう成田空港=2025年4月19日 Photo:JIJI

高市首相の台湾有事発言をめぐり、中国が打ち出した「54万件キャンセル」という数字に日本は騒然となった。だが、その実態を知れば見えてくるのは、社会主義国特有の「号令システム」と、実際には日本経済への影響が限定的である事実だ。5泊6日2000元という格安ツアーの驚くべき中身、そして政府の勧告に従わなくなった中国人たち。台湾海峡の向こう側で、今何が起きているのか。(フリーランスライター ふるまいよしこ)

中国政府のネガティブな反応は、既視感があるものばかり

 台湾海峡の向こう側。香港から遊びに来た30年来の友人に会いに行く道すがら、同窓生(日本人)にばったり会い、立ち話になった。

「え、出迎え?こんな時によく日本に来るわね?」
「……いや、香港人だし。半年以上も前からの予定だし」
「でも、中国人でしょ?大変じゃーん」

 おそらく、今、日本人のほとんどが彼女と同じように感じているのかもしれない。残念ながら、高市首相の「台湾有事論」から巻き起こった一連の騒ぎに多くの日本人は激昂しつつも、一般の「理解」はこんな、ぼんやりとした空気みたいなものだと感じている。

 一方、筆者にとって、「台湾有事論」に対する今回の中国の反応には既視感がありすぎて、あまりの新味のなさが逆に心配になるほどだ。

 たとえば、中国人の日本渡航中止勧告……2012年の尖閣諸島国有化の時にもやりましたよね?今回は日本への留学生にもその対象範囲を広げているが、新学年が始まったばかりの今、その効果はいかほどなのか。