「運」と「実力」を見抜く4つの視点で、投資の勝率は劇的に変わる
ゴールドマン・サックスに入社し、マネージング・ディレクターに就任、アジアのトレーディングチームを率いた。その後、200兆円超の運用残高を誇る世界有数の機関投資家・ゆうちょ銀行で投資戦略を牽引。そんなマーケットの最前線を知り尽くしたトレーダーが、個人投資家が一生使える「オルカン」「S&P500」の“次の投資術”を徹底指南した初の著書『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)。投資初心者でも実践できるよう、徹底的にわかりやすく投資手法を体系化。ゴールドマン・サックス仕込みの「投資思考」や「オルカン+4資産均等型」といった実践的なポートフォリオ(資産配分)の構築方法、有望な個別株の見つけ方まで、「オルカン」「S&P500」の“次に知るべき”ノウハウが満載!

【ゴールドマン・サックスの元トレーダーが教える】「なんとなく」で株を買う人はカモになる…投資のプロが絶好調企業でも「買わない」と即断する決定的な理由Photo: Adobe Stock

ビジネスモデル~「なんとなく」を排除せよ
利益の源泉を掘り下げる4つの視点

投資の目利きで何より重要なのが、ビジネスモデルの秀逸性と成長性をきちんと把握することです。具体的には、次のような視点を大切にしています。

☑その会社(業界)がなぜ伸びるのか?
☑その業界への追い風は持続性があるのか?
☑業績が伸びていく見込みがあるのか?
☑その業界で一定以上のシェアを確保していける優位性があり、利益を出していけるのか?

【解説】「運」と「実力」を峻別する

「なんとなく良さそう」という曖昧なイメージを排除し、論理的な確信へと変える作業。それがビジネスモデル分析の本質です。なぜここまで深く掘り下げる必要があるのか、そのメリットを整理してみましょう。

まず重要なのは、その業績が「外部環境のおかげ(運)」なのか、「企業の競争力のおかげ(実力)」なのかを見極めることです。

例えば、業界全体がブームで伸びている時は、二流、三流の企業でも業績は伸びてしまいます。しかし、ブームが去れば弱い企業から脱落します。

チェックリストにある「追い風の持続性」や「優位性」を確認することは、今は良くても将来崩れる「砂上の楼閣」への投資を避けるための必須作業です。一過性の特需なのか、社会構造の変化による不可逆的な成長なのかを言語化できれば、高値掴みのリスクは劇的に減ります

利益を守る「城壁(参入障壁)」を確認する

4つ目の視点にある「シェア確保」や「優位性」は、投資の神様ウォーレン・バフェット氏が言うところの「エコノミック・モート(経済の堀)」に通じます。

ビジネスの世界は残酷で、高い利益が出る市場には必ず強力なライバルが参入してきます。その時、他社が真似できない技術、圧倒的なブランド力、あるいは乗り換えコストの高さといった「城壁」がなければ、利益はすぐに削り取られてしまいます

数字上の利益だけでなく、その利益を守り抜く「強さ」の源泉がどこにあるのか。それを特定することが、長期的に資産を増やす鍵となります。

「握力」は分析の深さから生まれる

そして何より、ビジネスモデルを深く理解することは、暴落時の「精神安定剤」にもなります。

株価は市場の気まぐれで乱高下しますが、ビジネスそのものはそう簡単に揺らぎません。「株価は下がったが、この会社の優位性と成長ストーリーは崩れていない」と断言できるだけの分析があれば、狼狽売りすることなく、むしろ安値で買い増すチャンスと捉えることができるでしょう。

株価という「結果」に振り回されず、ビジネスという「原因」にフォーカスする。この視点の転換こそが、投資家としてのレベルアップにつながります。

※本稿は『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。