会社を伸ばす社長、ダメにする社長、そのわずかな違いとは何か? 中小企業の経営者から厚い信頼を集める人気コンサルタント小宮一慶氏の最新刊『[増補改訂版]経営書の教科書』(ダイヤモンド社)は、その30年の経験から「成功する経営者・リーダーになるための考え方と行動」についてまとめた経営論の集大成となる本です。本連載では同書から抜粋して、経営者としての実力を高めるための「正しい努力」や「正しい信念」とは何かについて、お伝えしていきます。
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「教えること」と「伝えること」
ここまで「考え方」の大切さを説明してきましたが、社長が正しい考え方を持ったうえで、その「考え方」が会社全体に伝わるかどうかもとても重要なことです。
なぜなら、多くの会社を見てきて「考え方」が浸透していないということが、少なくないからです。
リーダーとしては「教えること」と「伝えること」の二つができなければなりません。
「教える」とは、例えば機械を販売している会社であれば、機械の仕組みや使い方について従業員に知ってもらうこと。また新たに経理の担当になる人には、経理の仕組みや会社の伝票の仕組みなどについて、教えなければ仕事ができません。
つまり「教える」というのは、頭で理解してもらうことです。理屈です。
場合によっては、何らかの本やマニュアルを読む、あるいはネットを検索すれば、教わることはできるはずです。すべてを社長がやる必要もありません。
もちろん「教える」のは、会社にとって欠かせないことです。
けれど、もう一つ大事なことがあります。それは、「みんなで幸せになろう」「お客さまに喜んでいただくことで、社会に貢献しよう」といった「考え方」は、「教える」のではなくて「伝える」ことだということです。
気持ちを「伝える」と言いますね。気持ちは教えるものではないのです。信念も伝えるものです。この二つは、分けて考えなければなりません。
「伝える」ときは、自分の「気持ち」を伝える
うまく教えることも大事ですが、「伝える」というときは、自分の「気持ち」を伝えなければいけないのです。
では、どういうときに自分の気持ちが人に伝わるのでしょうか?
それは、人に伝えるべきことを、自分が信じたときです。
信じてもいないことを言っても、相手には伝わりません。
人に気持ちが伝わらない人は、本来、伝えなければならないことを教えているのかもしれません。つまり、頭で理解はしているが、本当に信じていないことなのかもしれません。
私は経営コンサルタントとして、会社の経営に必要となる技をお教えします。
けれど本当に大事なことは、経営者、経営幹部が「正しい考え方」を持ち、それを実践できるように手助けすることです。そして、それを部下たちに「伝える」ことが大切なのです。
(本稿は『[増補改訂版]経営者の教科書 成功するリーダーになるための考え方と行動』の一部を抜粋・編集したものです)
株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
10数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。
1957年大阪府堺市生まれ。京都大学法学部を卒業し、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。在職中の84年から2年間、米ダートマス大学タック経営大学院に留学し、MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、91年、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の93年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。
94年5月からは日本福祉サービス(現セントケア・ホールディング)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年より、名古屋大学客員教授。
著書に『社長の教科書』『経営者の教科書』『社長の成功習慣』(以上、ダイヤモンド社)、『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』『図解キャッシュフロー経営』(以上、東洋経済新報社)、『図解「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』『図解「PERって何?」という人のための投資指標の教科書』(以上、PHP研究所)等がある。著書は160冊以上。累計発行部数約405万部。




