会社を伸ばす社長、ダメにする社長、そのわずかな違いとは何か? 中小企業の経営者から厚い信頼を集める人気コンサルタント小宮一慶氏の最新刊『[増補改訂版]経営書の教科書』(ダイヤモンド社)は、その30年の経験から「成功する経営者・リーダーになるための考え方と行動」についてまとめた経営論の集大成となる本です。本連載では同書から抜粋して、経営者としての実力を高めるための「正しい努力」や「正しい信念」とは何かについて、お伝えしていきます。
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厳しいことを言う勇気は
どこから出てくるのか?
ただし、厳しいことを言うには勇気がいります。では、その勇気はどこから出てくるのでしょうか。私は、勇気は「信念」から生まれると考えています。
つまり、「この会社を良くして、お客さまに喜んでいただいて、働いてくれている人にも幸せになってもらおう」という信念があれば、厳しいことも言えるのです。
しかし「しばらくの間、うまくいけばいい」とか「小言を言うと嫌がられるのではないか」といったような考えでは、厳しいことは言えません。
先にも述べたように私には人生の師匠がいます。
残念ながら15年前に99歳で亡くなった藤本幸邦老師です。老師は、長野県長野市篠ノ井にある円福寺という曹洞宗のお寺のお坊さん(晩年は大本山永平寺の最高顧問も務められた)でしたが、戦後すぐに、戦災孤児たちのための施設「円福寺愛育園」を開設するとともに、全国の曹洞宗のお寺に戦災孤児を一人ずつ預かるようにという運動を始めました。「円福寺愛育園」は、今でも恵まれない子どもたちの施設として円福寺にあります。
信念こそが、勇気やエネルギーの源泉となる
老師は、その後もボランティア活動を続け、中国、カンボジア、バングラデシュなどに学校を建て、アフリカの奥地に大きな水のタンクを贈るということもされていました。アフリカの奥地では今でも、水汲みのために学校に行けない子どもたちが多くいるのです。
信州大学や新潟大学に通う恵まれない地域からの留学生に、本を毎年1万円分買って支援するという活動も行ってこられました。私は、先生のボランティア活動の東京事務局長を今でもやっています。
老師は90歳を過ぎても、飛行機に乗り海外でのボランティア活動をされていましたが、あるときに、私は、藤本老師のエネルギーはどこから湧いてくるのかと考えました。
そして、それは「信念」だということに気づきました。世界中の恵まれない子どもたちを救いたいという信念です。
信念こそが勇気やエネルギーの源泉であるということを、私は老師から学んだのです。
私たち経営者も、「信念」を持たないかぎり、勇気やエネルギーは湧いてこないのです。
(本稿は『[増補改訂版]経営者の教科書 成功するリーダーになるための考え方と行動』の一部を抜粋・編集したものです)
株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
10数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。
1957年大阪府堺市生まれ。京都大学法学部を卒業し、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。在職中の84年から2年間、米ダートマス大学タック経営大学院に留学し、MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、91年、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の93年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。
94年5月からは日本福祉サービス(現セントケア・ホールディング)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年より、名古屋大学客員教授。
著書に『社長の教科書』『経営者の教科書』『社長の成功習慣』(以上、ダイヤモンド社)、『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』『図解キャッシュフロー経営』(以上、東洋経済新報社)、『図解「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』『図解「PERって何?」という人のための投資指標の教科書』(以上、PHP研究所)等がある。著書は160冊以上。累計発行部数約405万部。




