「お前なんか辞めてしまえ!」
企業の管理職の中には、自分の権限の範囲を省みることなく、こんな大胆な発言をする人がいる。
このような言動は、時として“墓穴”を掘る場合がある。
今回は、部下に退職を執拗に迫った挙句、部下から訴えられて会社にまで“スケープゴート”にされた副部長を紹介する。
あなたの職場にも、このような“勘違い管理職”はいないだろうか。
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■今回の主人公
上村二司(58歳)
勤務先:不動産会社の関連会社。従業員数330人。業績は昨年からやや伸び悩むが、おおむね好調である。創業15年ほどの若い会社だが、親会社の支援もあり、社内の体制は整っている。上村はここへ来る前に、“ある事件”に関わっていた。
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(※この記事は、取材した情報をプライバシー保護の観点から、一部デフォルメしています。)
“事件”の当事者が10年ぶりに再会
「かつての部下」が目にしたものは?
2人の“再会”は、10年ぶりだった。
かつての「上司」である上村が歩いていたのは、渋谷のNHK放送センターからJR渋谷駅近くの東急本店に向かう、幅5メートルほどの道だった。「部下」であった伊田がその姿を偶然見つけたのは、午後11時頃だ。
上村は変わり果てていた。初老のやつれた男になっていた。もはやあのふてぶてしさは、微塵も感じられない。
髪の毛はそのほとんどが白髪。暗がりの中でも、その白い髪は目立っていた。それが車の明かりに照らされ、一段と白く見える。
道が明かりで照らされる度に、上村の腰や尻のラインが浮かび上がる。“あの頃”は、ぜい肉で丸みを帯びていた。