サイバーエージェント創業者の藤田晋氏サイバーエージェント創業者の藤田晋氏。2025年12月12日付で社長を退いて会長に就任した Photo by Shogo Murakami

24歳で起業し、26歳で史上最年少上場(当時)を果たして以来、四半世紀以上にわたりIT業界のトップランナーとして走り続けてきた藤田晋氏。2022年の春に、26年に社長を退くことを宣言してから、16名を次期社長候補者に選抜。長期にわたり育成を行い、25年12月12日付で会長に退いた。アマゾンの「リーダーシップ」カテゴリーで1位に輝いている『勝負眼 「押し引き」を見極める思考と技術』(文藝春秋、2025年11月30日刊行)の著者でもある藤田氏に「役員になる人の資質」について聞いた。(取材・構成/イトモス研究所所長 小倉健一)

大局観は
どうすれば養えるのか

――藤田さんはスマートフォン時代の到来を予見し、2011年に社内でスマホシフトを宣言。「総張り戦略」として、さまざまな部署から優秀な社員をかき集めて、スマホに関連するありとあらゆる事業を立ち上げました。その大局観はどうすれば養えるのでしょうか。

藤田晋(以下、藤田) スマートフォンがガラケーに取って代わることは、大局観といえるほどのものではなく、冷静になって俯瞰すれば分かる当たり前のことだったと思います。

 けれども日々、目の前の事業に向き合い、ガラケー関連の事業から生み出される売上を追いかけている人の中には、スマホ時代の到来から目をそらし、その対策をしないで済む方法を必死で探している人も多くいました。

 それはこれまでのガラケーのサービスからスマホに移行する過程で投資が必要となる上にリソースが割かれ、一時的に業績への影響が懸念されるからです。

 これはIT業界、メディア業界に限った話ではなく、様々な業界でも同じように変化が起きています。環境変化を素直に受け止め、自分たちもいち早く変化できるかどうかが、いわゆる大局観と言われるものにつながるのではないでしょうか。