「お子さん、受験考えてます?」
息子が1歳の時にこう聞かれた。まったく考えていなかったが、これをキッカケに首都圏の中学受験事情を調べはじめ、「受験勉強のストレスで精神科に通う小学生が増えている」という記事にたどり着いた。こっ怖い……。というか受験がうまくいくかより、もっと大事なことがあるんじゃないか? そんな編集者の個人的な経験から生まれたのが『たった1日で誰でも開成・灘中の算数入試問題が解けちゃう本』だ。この本は「友だちを簡単に作る方法」や「AIにできないこと」など、算数とは関係なさそうな話題を展開しながら最終的に天才が通うような難関校の問題をフルカラー、イラスト満載で解説するという前代未聞の作りになっている。今回は本書を「こんなワクワクしたの何年振りだろ」と絶賛する精神科医さわ先生と担当編集のインタビューの一部をお届けする。皆さんは、テスト前、勉強そこそこしたのに「勉強してない!」って言ったことあります?(インタビュー/ダイヤモンド社淡路 構成/山守麻衣)

たった1日で誰でも開成・灘中の算数入試問題が解けちゃう本Photo: Adobe Stock

テスト前の「あの会話」に潜む本音

――テスト前に本当は勉強しているのに「全然勉強してないよ」と言う子、どの学校にもいますよね。

精神科医さわ(以下、さわ):いますよね。私が通ってた中学でも同じでした。

――勉強してるのに「勉強してないよ」と言うのは、どういう心理なんでしょうか?

さわ:自分を守るための言葉だと思います。もし点数が悪くても、「だって勉強してないし」と自分をかばえるようにするための、保険のような一言。気持ちはとてもよく分かります。

――僕も言った覚えがあります……。

さわ:私が通っていた学校に、今でも仲良くしている大親友がいるんです。その子は、とにかくノートが素晴らしかった。授業の内容がきれいに整理されていて、ポイントも分かりやすい。学年中で「彼女のノートがいちばん分かりやすい」と評判になるくらいでした。その子は、「勉強したよ!」と正直に言う子だったんです。

――なんか自信満々で嫌な感じしませんか?

さわ:それが、すごく友達が多かったんです!自然と人が集まるタイプの子というか……。その子は、「私なんて全然だよ」と卑下するのではなく、「ここはちゃんとやった」「ここはまだ不安だから一緒にやろう」と、ありのままを出せるタイプでした。「ここは難しいからちゃんとやった方がいいよ~」とも言ってました。その子は徹底的にギブする人だったんです。自分を隠したりしなかったんですよ。惜しみなく、自分のノートを誰にでもコピーさせてあげてたし。最終的に、私が全然勉強しないから「さわ、これ、私完璧だから持って帰りな」とテスト前日に私に持って帰らせてくれたんですよ。「勉強してないよ」と言う子より圧倒的に友達が多かったですね。

――テスト前に“勉強してないです”という人じゃなくて、“勉強したよ”と言って周りにノートを見せてあげる人のほうが友達が多かった、という話は、とても本質的ですね。

さわ:私の周りでの話ではありますが、「勉強してないよ」と言うことで身を守ろうとする子より、「勉強したよ」と言ってノートを見せたり、分からないところを一緒に考えたりできる子。後者のほうが、圧倒的に友達が多く、信頼も厚かったように思います。その子は「自分だけ良い点とろう」とは思ってなくて、「みんなでいい点取ろうよ」と本当に思ってましたね。その空気が他の子にも伝わり、みんなで勉強し合って、私のクラスだけ平均点が良かったですもん。

――これって、仕事でも同じで、「自分だけ売上をあげよう」と思っている人より、自分が持ってるノウハウとかどんどんシェアする人の方が、信頼が得られて、仕事ができる人って認識されますよね。

さわ:ほんとそうですね。ギブする人って信頼が厚く、友だちも多いですね。まあ私は、あの頃本当に勉強してなかったので、勉強した!と言おうにも言えなかったんですが。笑

――勉強してないのに「勉強した!」と言う意味ないですもんね(笑)。今は『たった1日で誰でも開成・灘中の算数入試問題が解けちゃう本』をいろんな人に渡してくださってると。

さわ:はい、本読んでこんなにワクワクしたの久しぶりで……。周りのお受験ママに渡しまくってます。あ、ギブしてます!笑

――さわさんが今、いろんなメディアに引っ張りだこな理由がわかった気がしました!

<本稿は『たった1日で誰でも開成・灘中の算数入試問題が解けちゃう本』(菅藤佑太著)に関するインタビュー記事です>

精神科医さわ(せいしんかい・さわ)
塩釜口こころクリニック(名古屋市)院長。児童精神科医。精神保健指定医、精神科専門医、公認心理師
1984年三重県生まれ。開業医の父と薬剤師の母のもとに育ち、南山中学校・高等学校女子部、藤田医科大学医学部卒業。勤務医時代はアルコール依存症など多くの患者と向き合う。発達ユニークな娘2人をシングルで育てる母でもあり、長女の不登校と発達障害の診断をきっかけに、「同じような悩みをもつ親子の支えになりたい」と2021年に塩釜口こころクリニックを開業。開業直後から予約が殺到し、現在も月に約400人の親子を診察。これまで延べ5万人以上の診療に携わる。患者やその保護者からは「同じ母親としての言葉に救われた」「子育てに希望が持てた」「先生に会うと安心する」「生きる勇気をもらえた」と涙を流す患者さんも多い。
YouTube「精神科医さわの幸せの処方箋」(登録者10万人超)、Voicyでの毎朝の音声配信も好評で、「子育てや生きるのがラクになった」と幅広い層に支持されている。
著書にベストセラー『子どもが本当に思っていること』『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』(以上、日本実業出版社)、監修に『こどもアウトプット図鑑』(サンクチュアリ出版)がある。