24年8月の夕方、大阪のJR天満駅から日本一長いといわれる天神橋筋商店街を横切り、駅から歩いて8分ほどの「T・I・C谷口医院」(北区野崎町)を訪ねた。日本語の院名の下に「Taniguchi International Clinic」と英語名が書かれてある。日本人と比べて診療拒否に遭いやすい外国人患者への配慮だ。
ドクターショッピングは
臓器別の縦割り医療と表裏一体
院長の谷口恭はこのとき55歳。研修医時代にタイのエイズホスピスで学んだのを機に、日本では数少ない総合診療医の道を歩み続ける。
02年夏、タイ・ロッブリー県の寺院にあるエイズホスピスを訪れた谷口は、呼吸難や発熱、下痢、吐血などに苦しむ100人以上のエイズ患者を診察する欧米の医師たちを見た。手分けして患者全員から丁寧に話を聞き、すべての症状に対応する。医師たちは全員、どんな症状でも診ることができる総合診療医だった。
「今でもそうだが、当時の日本は臓器別専門医による縦割りの医療で、患者が来ても『専門外なので他を探してください』と診察を断る常套句を何度聞いたか分からない。僕が研修医の頃には『どこに行っても診てもらえない』と言って、ドクターショッピングを繰り返している患者がすごく多かった。医者はそういう患者を悪く言うけど、どんなことでも相談に乗ってもらえるかかりつけ医がいれば、このような問題は起こらない。医者は患者を診てなんぼです」
いったん帰国した谷口は研修医期間を終了した後、再びタイの寺院を訪れて時間をかけて総合診療を学んだ。
帰国後、当時は志望者がほとんどいなかった母校の総合診療部の医局に入る一方、無給で他の医療機関で働き、臨床能力のアップを図るために研鑚を積んだ。
「大学で、よその科で診断がつかなかった人たちを診察するようになったんですが、診断がつけばそれで終了となり、『次からは近くのクリニックに行ってください』と言わないといけなかった。僕はそれがイヤで、『また困ったことがあれば、いつでも相談してくださいね』と言いたかった。この言葉を早く言いたかったから開業したようなもんです」







