
厚生労働省は医療費削減の名目で入院ベッドを減らし、中小病院を次々に追い詰めていった。その一方で、診療報酬は開業医有利のまま据え置かれ、無駄な検査や投薬を増やすほど診療所が儲かる仕組みは残されたままだ。こうしたコストカットの施策で、果たして本当に国民の命を守れるのか。※本稿は、熊谷賴佳『2030-2040年 医療の真実 下町病院長だから見える医療の末路』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。
日本医師会は開業医優遇の
診療報酬を守り続けてきた
医療崩壊を招いたのは、医療の効率化を阻止し、開業医に有利な診療報酬体系を推進してきた日本医師会の責任も重大だ。
日本医師会というと、医師全体の代表のように思われるかもしれないが、医師会は開業医が中心の団体だ。近年は病院勤務医も所属してはいるものの、幹部の多くは相変わらず開業医が占めている。
診療報酬の改定を議論する厚生労働大臣の諮問機関の中央社会保険医療協議会(中医協)や医療政策を左右する厚生労働省の審議会などにも日本医師会の代表が参加し、長年、主に開業医を守る団体として機能してきた。
中医協は、データを基に医療費の無駄遣いが行われているかなどを分析するわけではなく、とにかく国民医療費が膨張しているからどこか減らさないといけないという議論に終始している。
介護療養型病院を簡単に廃止の方向へ進めるなど、発言力の弱い集団はやられっぱなしで、診療所の開業医に有利な診療報酬は残る。
例えば、開業医のメイン収入となる外来の診療料は、結果的に、病院よりも診療所の開業医に有利になるように設定されている。
国民皆保険制度が始まって以来、診療報酬は変な平等主義の点数が設定されてきた。